八丈島エクスカーション
日本シダの会創立50周年記念大会のエクスカーションは伊豆八丈島で行われました。八丈島の名にちなんだシダもハチジョウシダ、ハチジョウカナワラビ、ハチジョウウラボシ、ハチジョウベニシダとあり、今回私も以前から疑問に思っていたシケシダの仲間を見るということもあり、胸膨らむエクスカーションでした。
そのような中、Barbara J. Hoshizaki さんといろいろな話ができたのは私にとって最大の思い出です。
そのおりに見たいくつかの植物たちです。
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ガクアジサイ |
シマクサギ |
アジサイの原種の一つであるガクアジサイは房総半島や伊豆半島では海岸近くで見られるのに対しここでは島のあちこちで見ることができます。特に八丈富士の山腹には多く、ただ火口内に見られる個体は葉がうすく、一つの生態型を示しているようでした。
同じ様な場所にタマアジサイの変種であるラセイタタマアジサイが混生し、おもしろい風景をつくっていました。この2種類はかなりの日当たりを好むようで、本土で見るタマアジサイが日陰の渓流沿いなどの湿度の高い所に自生する、その生態の違いに驚きました。
最近新種として記載されたシマクサギもごく普通に見ることができます。クサギとは花の構造や色などではっきりと区別できます。
クサギには一種独特の香りがありますが、この種類はむしろ快い香りです。クサギの仲間は花の美しいものが多くかなりの種類が庭などに植えられていますが、本種もこれからの園芸植物として期待できそうです。
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アオノクマタケラン |
カルデラ内のヤマグルマ群落 |
今回見たかった植物にハナミョウガ属 Alpinia があったのですが、八丈島ではこのアオノクマタケランのみが産するようです。島内の林床にはごく普通に見ることができます。花が終わって実をつけた個体ばかりで、これは残り少ない花。同じような場所ではシマテンナンショウも多く、こちらは実が赤く熟しており、葉も枯れかけて休眠に入るところのようでした。
島内ではあちこちでこの仲間の園芸品種がエスケープしており、自生と紛らわしい場合があるので注意が必要です。
原始的被子植物として、東アジア特産の一属一種植物として有名なヤマグルマを八丈島でも見ることができます。八丈富士の山頂カルデラ内の中央火口の内側急斜面には本種が群落をつくっています。カルデラ内の社には古木がありこれが元になって繁殖したのではと言われています。
カルデラの外輪山では植物の生育しない裸地に以前にはハチジョウコゴメグサがよく見られましたが、これは現在ほとんど見られなくなったと言われます。それも遷移が進んで草地が広がり、ハチジョウコゴメグサの生育できる環境がなくなったからかもしれません。
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ヘゴ |
ハチジョウシダ |
木生シダの一種であるヘゴは八丈島が北限となっており、三原山の鴨川沿いでは多くの個体を観察することができます。
北限産地というと一般には個体数も少なく自然繁殖しているのをあまり見ることができませんが、ここでは子株も見ることができ、自然繁殖しているようでした。林道ができるなど環境が変わらなければこのシダの宝庫は守られていくことでしょう。
一般にこの仲間で市販されるのはマルハチでヘゴはほとんど見ることができません。以前には八丈島の業者がかなり積極的に胞子から生産していましたが、現在では中止しているようでマルハチとともに市販されることはほとんどなくなりました。観賞価値が高いだけに残念です。
八丈島の名をいただくハチジョウシダ。八丈島ではこの仲間はこの種類一種類だけのようですが、かなり変異も見られますのでこれからの検討が必要でしょう。
一応 Pteris fauriei と呼ばれていますが、国内に見られるものだけでも変異があり、この学名で呼ばれる国外のものを見ると本当に頭が痛くなってしまいます。小笠原のこの仲間もいくつかの種類があるようでこれからの研究が楽しみです。
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