シダの胞子栽培
 栽培されるシダの繁殖にはいろいろな方法がありますが、最も一般的なのは株分けです。かなりの種類で有効な方法ですが、ヘゴの仲間やオシダ科の各種のように根茎が枝分かれしない種類ではこの方法をとることができません。そのような場合、胞子繁殖が最も有望となるわけですが、この方法はあまり一般的ではなく、躊躇する方が決して少なくありません。
しかし実際にやってみるとそんなに難しくなく、増殖法としてはたいへん優れたものなのです。一度やってみませんか。
 <胞子栽培の利点>
胞子栽培には様々な利点がありますが、以下のものが代表的なものです。
 @ヘゴなどのような単茎種ではこの方法以外ではほとんど増殖できない。
 A一度に大量に増殖できる。
 B多数の個体を扱うために、その中に変異個体が出現することがある。
 C胞子は採集が簡単である。
現在、自生する株を採集することは自然保護の上からもできることではありません。そのような中、胞子であれば栽培品からの採取も簡単にできます。また自生のものからの採取も葉の2〜3cmの切れ端があれば充分ですので、自然保護の上からも知っていることは必要だと思います。
 <胞子栽培の留意点>
いろいろな方法が紹介されていますが、どの方法でも結果は大差ありません。留意点は以下の通りです。
 @いかにシダの胞子のみを発芽させ、成長させるか。
胞子が発芽して前葉体ができ、これから幼葉が出るまでに他のものが発生しないようにすること。こ    れがまず一番重要です。
 A受精を手伝うには。
シダの受精には水が必要ですが、このときにタイミングよく受精に必要な水が与えられることが必要    です。
 B幼苗期の移植。
胞子を蒔くと多数の苗が得られ、これを移植することになります。この幼苗の移植は環境の変化に対する抵抗性はあまり強いものではありません。したがって移植には細心の注意が必要です。
 <実際の胞子栽培>
ここで紹介するのはあくまで私の方法です。各自の環境条件は違いますので、各々に合わせて工夫する必要があると思います。
 @胞子の準備。
胞子の採集時期は種類によって違います。大まかに言えば胞子嚢のはじける頃です。
その頃の葉を採取してパラフィン紙の袋に入れて放置し、乾燥させると胞子がたくさん落ちてきます。採取した胞子は乾燥させた状態で冷暗所に保存すれば数年間は発芽率が落ちません。しかし、ゼンマイなど一部の胞子は保存すると急激に発芽率が落ちるためにすぐに蒔く必要があります。
 A胞子を蒔く容器の準備。
容器は密閉できるものなら何でも良いのですが、私は透明のプラスチック容器を使っています。梅干などが入っている容器です。
これは卸売り市場近くの資材屋さんで入手したものですが同じようなものはホームセンターなどでも入手できると思います。
これに培地をいれるわけですが、培地は無菌のものが必要です。というのも胞子が発芽して最初の植え替えまで数ヶ月必要なものが普通で、その間に不要なものが繁殖しては困るわけです。そのために無菌なもの、あるいは殺菌が必要になってきます。
私はこれにバーミキュライトを用いています。最初から無菌ですので殺菌する手間が省けて便利です。
容器にこのバーミキュライトを入れ、水を加えます。ただ、バーミキュライトは無肥料ですのでハイポネックスの2000倍溶液を使っています。
 B胞子を蒔く。
容器の準備ができたら胞子を蒔くことになります。このときの注意としてはできる限り薄く蒔くことです。
胞子は小さいためどうしても多く蒔きがちになってしまいます。条件さえ良ければ胞子の発芽率は案外良く、発芽後前葉体が1cmぐらいになることから、胞子をできる限り薄く蒔くことは理解できると思います。
 C蒔いた後の置き場所。
容器が密閉されているわけですから直接日光があたるところには絶対置いてはいけません。直射日光のあたらない明るい場所において発芽を待ちます。
一週間ほどすると発芽が始まり、うっすらと緑色が見えてきます。そして一ヶ月から三ヶ月で前葉体が完成します。
この間培地が乾燥するようなら、2000倍のハイポネックス溶液を追加します。
前葉体が完成したら、受精ということになりますがほっておいた場合あまり受精率は良くないようです。精子は水の中を泳いで卵細胞に達するわけですから、それを助けるためにふたの内側に付いている水滴をふたを指ではじいて落としてやります。これを一日に一回、数回やれば受精率はぐっと上がります。
 D移植と順化。
受精後幼葉が展開してきます。これが1cmぐらいなったら移植するわけですが、それまで密閉容器内で生育してきたわけですから乾燥には極めて弱くなっています。
移植のための培養土はできるだけ清潔なものを使用します。そして移植ですが一株ずつばらばらにして移植するよりは数株をまとめたほうがその後の生育ははるかに良好です。というよりはバーミキュライトを培地として使うとどうしても数株がくっついてきてしまうのでそのまま移植します。
ポットに移植したら乾燥を防ぐためにビニール袋に入れて密封してしまいます。そして数日後少しずつビニール袋を開けて外気を入れ、1〜2週間かけて完全に外気に慣らします。この間は本当に気を使いますが、ここで気を抜くとこれまでの苦労が水の泡となってしまいます。
 Eその後の管理。
苗が2〜3cm以上になればもう普通の管理をします。胞子からの苗はその後の生育が早く、1〜2年後には成株になります。
以上の方法はむかごをつける種類の増殖にも使えますので、ぜひやってみて下さい。

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