小笠原を訪ねて

 小笠原、植物を楽しんでいるものにとっては憧れの場所です。まあいつかなんて思っていたのですが、数年前に名古屋からのクルーズがあることを知り。昨年やっと申し込むことができました。
小笠原といえば東京からの小笠原丸を思いますが、この元旦を挟むクルーズは父島に二日間しか滞在できないことを除けば快適に過ごせます。なにせフェリーを使っていますので車に荷物を載せてそのまま船上の人となることができます。
鳥島 孀婦岩

        

 29日の夕方に名古屋を出港してあくる日の見所は小笠原航路の途中に見られる鳥島と孀婦岩です。
鳥島を通過したのが午後1時過ぎ、船は追い風に乗って予定より早く進んでいるということでスピードを落として島の南側にある繁殖地を望むことができました。
このときはブリッジにみんなが集まりわいわいがやがやとバードウオッチングです。アホウドリには三種いるということですが、このときには二種を見ることができました。私にはクロアシアホウドリしかわかりませんでした。
そして孀婦岩です。船長は「ぜひ夕焼けをバックにして船を走らせたい」と言っていたのですが、残念ながら夕焼けはあまりきれいではありませんでした。しかしこのときも時間があるということで孀婦岩を一周するというサービスぶり、いろいろな角度から見る孀婦岩を楽しみました。
とは言ってもまわりはすべて海で比較するものは何も無く、岩の形が少しずつ変わること、夕焼けの方向が少しずつ変わること、航跡がまっすぐでないことぐらいで周回していることがわかる程度、とても実感できるものではありませんでした。
名古屋を出てから父島まで、ほとんど揺れることもなく快適なクルーズを楽しみました。
小笠原丸と母島丸 「いしかり」と「きそ」
 年末年始の父島は船のラッシュでした。岸壁に停泊しているのが東京からの小笠原丸です。31日の昼過ぎの予定がエンジン故障で夜に到着していました。その頃はちょうど低気圧が近づいていて、揺れがたいへんだっただろうと思います。(このときには自分たちの乗っている船が帰りにたいへんな揺れに遭遇するなんて夢にも思っていませんでした。)
向こう側に見えるのが母島丸で父島と母島を結ぶ定期船です。島の物資はこれら定期船(もうひとつ貨物船があるようですが)に負っているため、船の入港前にスーパーに行っても生鮮食料品はほとんどありません。31日と1日のスーパーを見て島の生活の厳しさをひしひしと感じました。
 そして二見湾に停泊する太平洋フェリーの二隻です。左が名古屋からの「いしかり」、右が東京からの「きそ」です。小笠原丸が1000人、「いしかり」が400人、「きそ」が700人ということですから、狭い父島に2000人以上の観光客が訪れたことになるわけです。
これは31日の姿で1日にはその位置関係が変わっていました。31日の夜に突風が吹き、「いしかり」のブイにつながれたロープが切れてしまったということです。(その頃小笠原丸が入港してきた) しかし船内ではそんなこと知る由もなく、カウントダウンパーテイが開かれていました。最後の船長挨拶がなかったのもその頃ブリッジは大変だったとのこと、後で知りました。
アオウミガメの放流 アオウミガメに付けられた標識
  小笠原では元旦に海開きがおこなわれます。これはそのおりのアオウミガメの放流です。普段は孵化したらその日の朝までに放流するということですが、これは行事としての放流のようです。子供たちが一頭ずつ手に取り、参加です。
右側はその足に付けられた標識です。アオウミガメの生態を知る一環なのでしょう。
 小笠原といえばアオウミガメの料理が食べられることでも有名です。この放流を見た後、早速食べに行きました。お勧めはやはり刺身です。馬刺しに似た感じでなかなかあっさりしたものです。年間100頭の捕獲が許可されているということですのでなかなか貴重品です。
島のスーパーでは冷凍の薬膳スープや、刺身、ステーキ、そして缶詰が売られていました。家内が購入していました。
父島の代表的な植生

 父島の稜線でごく普通に見る植生です。三日月山から兄島瀬戸をはさんで空港建設で話題になった兄島を望みます。
遠くから見て最も目立つのがオガサワラビロウで島のあちこちで見られます。ビロウとは種子の形が違うのですが、残念ながら種子を観察することができませんでした。時期が悪かったのとあっても高くてとても手に取るということができなかったからです。
ヤシの仲間はもう一種、ノヤシがあるのですがこれは見ることができませんでした。島内ではヤシの仲間を何種類も見ることができますが、この2種を除き全て移入種のようです。ココヤシやケンチャヤシの仲間などはすぐにわかるのですが、クロツグを見たときにはどっきりしました。クロツグは琉球列島で何度も見ていたのですが、ここで見るとは思いもよりませんでした。
シマクワズイモ チトセラン

 父島で普通に見られる植物はほとんど移入種と思ってさしつかえありません。特に山の中腹以下では顕著です。海岸付近で最も普通に見られるのがモクマオウとギンネムです。そしてリュウキュウマツも普通に見られます。少し山に入ればガジュマルやダイサンチク(Bambusa vulgaris)などが鬱蒼と茂っています。岩場にはアオノリュウゼツランも見られます。
 上の二種は観葉植物としてもごく普通に見るシマクワズイモとチトセラン(観葉植物として普通に見る斑入りのものは見ることができませんでした)ですが、このような植物がごく普通に見られるわけです。
ショウガ科のゲットウやシュクシャも普通に見られ、琉球列島で見たカンナと同じタイプのものも見られました。
このような植物を見ていると琉球との交流がかなりあったのかなと思いますが、そのあたりどうなんでしょうか。
 しかし小笠原特産の植物もあちこちに見られます。一番目立つのがタコノキで並木として植えられたりであちこちで見ることができます。アダンに似ていますが種子の形状が違いますので区別できます。このタコノキとカランコエの仲間のいわゆるハカラメがお土産として売られていました。
小笠原のハマオモト(ハマユウ)

 今回の目的の一つにこのハマオモトがありました。これは大村海岸の公園に植えられていたもので自生のものではありませんが、付いていた種子はまさに小笠原のハマオモトの特徴を示していました。花も大きいですね。
このタイプのものは与那国島や台湾に見られるということですが、ぜひ見たいと思っています。
小笠原のものはオガサワラハマオモト、与那国島以南のものはタイワンハマオモトと呼ばれることもあるようです。
 農協の売店で本種の苗を見つけて購入しました。小笠原は植物の持ち出しに付いて大変厳しく、必ず植物検疫を受けねばなりません。
幸いのことに農協の職員の方が検疫に持っていかれて無事に持ち出すことができました。ただ、港に検疫官のいるのは小笠原丸の出港時だけということですので、クルーズのときは注意が必要です。私の場合は31日に頼んで、1日の「いしかり」の出港前に検疫済みの苗をいただいたわけです。
モンテンボク ツルダコ
 アオイ科のモンテンボク、タコノキ科のツルダコも小笠原特産の植物です。
モンテンボクはオオハマボウが海岸付近に見られるのに対し、山の中腹以上のやや乾燥する場所に見られます。開花期ではなかったためあまり目立ちませんでしたが、そんなに珍しいというものではないようであちこちで見ることができました。
それ以上に普通に見られたのがツルダコです。乾いた林床のあちこちにみることができ、優先種の様相を見せています。最初に本種を見たときにはさすが小笠原と感激したのですが、すぐにあまりの多さにうんざりとなってしまいました。
小笠原といえばシダ植物を忘れることができません。今回の目的は何種類の小笠原特産のシダが見られるかでした。
ヒリュウシダ マツバラン
 南に行けば必ずといっていいほど見られるヒリュウシダとマツバランですが、そんなに数は多いものではありませんでした。画像を整理していて気が付いたのですが、ヒリュウシダの後ろに写っている樹幹は何でしょう。そのときはシダに眼を奪われていて上を見ていなかったことを今、後悔しています。
マツバランは長さが30cm以上あります。こんなにでかいのは久しぶりに見ました。

イワヒバ

 そのような中でびっくりしたのがイワヒバです。産することは以前から知っていたのですがこの目で見るまでは信じられませんでした。中央山の展望台わきの岩場に生育していました。これまでの経験から本種は温帯性のシダというイメージが強すぎて、父島のような亜熱帯の島で見ようとは思いませんでした。
しかしやっと生育しているという感じでそんなに大きい個体ではありませんでした。
 
ヒバゴケ ホソバクリハラン
  クラマゴケの仲間であるヒバゴケは中央山の遊歩道沿いで普通に見ることができます。この中央山付近は小笠原特産の樹木が多く見られるところで遊歩道も整備されており植物観察には良い所だと思います。
右は樹幹に着生する小笠原特産のノキシノブの仲間のホソバクリハランです。タマシダが一緒に見られますがボウランと一緒に生育しているものも見かけました。ここではムニンヒメワラビも見ることができました。

マルハチ メヘゴ

 小笠原特産のヘゴの仲間といえばこの二種です。
マルハチはよくヒカゲヘゴと間違えられますが、葉柄のリン片の色と形状、樹幹部の葉の落ちた跡などに特徴がありはっきりと区別できます。ちょうど沖縄で見られるヒカゲヘゴと同じような場所で見られ、島内ではあちこちで見ることができます。
それに対してメヘゴはごく限られた場所に生育するようです。これは初寝浦近くで見られたもので付近ではムニンエダウチホングウシダ、オオシケシダ、キンモウイノデ、オガサワラリュウビンタイ、それにシュスランの仲間など面白いものが一杯あり、小笠原特産の植物を思う存分楽しみました。
 日本産のヘゴの仲間でまだ見ていない種類は硫黄島のエダウチヘゴと琉球列島のチャボへゴがありますが、前者はまず望み薄ですが後者はぜひ機会をつくって見てみたいと思っています。


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