シンポジウム「都市に残された自然」 2003年7月13日
ヒメボタルから何が見えるのか
−生態系を守ることの意味−
八田耕吉(名古屋女子大学環境生物学教授)
I.貴重種保護から生態系の保全へ
個体の保護では種の維持ははかれない
1.個体群生態学
生存曲線 生命表
子育てのリスク
2.強いものが残る競争とは
なわばりの成立と意味 数を一定にする機構
同種内競争と異種間競争
3.絶滅
トキになにを学んだのか(生息地保護)
II.生態系の保全とは
生育・生息環境は、保全に欠かすことのできない必要な条件であっても、決して十分な条件ではありえない
1.遷移と撹乱
湿地保全と手入れ
2.多様性の重要性
生態系を支える種の減少は、生態系の安定度を下げ、崩壊しやすくする
3.生態的地位(ニッチェ)
単純な食物連鎖の段階だけでなく、その地域特有の集団の特性がある
4.地域個体群の維持
たとえ似た植生環境をつくり出せても、そこに棲む多様な生物相を再現することはできない
5.生態ピラミッドの頂点
上位種の欠損は、特定種の大量発生やその生態系を構成する種の減少を起こす
III.ホットスポットとしての里山
人との共生により、いくつもの遷移の過程がパッチ状に入り組んでできた景観を長い時間をかけて創られてきた二次自然である
1.多様性
特異性の高い小集団が、モザイク状に入り組んだ植生環境の駆け引きの結果として多様な地域性の高い集団を構成
2.ホットスポット(危機地帯)
周囲から孤立した生態系(景観)は、遷移の段階が進んだり、撹乱が起きたときには移入・移出の場が少なく、個体群を維持することが困難である
3.地域生態系
人と自然の駆け引きにより作り出されたその地域特有の生態系は、そこにすむ多様な生物相を再現することはできない
IV.保全と保護の勘違い
自然の保護は、破壊を前提とした保全措置とは違う
1.回避・低減・代償
はじめに開発ありき
予測に対しての不確実性(影響は少ない、環境に配慮)、
2.生態系の保全
生態系を構成する種の減少や単純化は、生態系の安定度を下げ、崩壊しやすくする
3.広域保全
周りに開発の波が押し寄せている『陸の孤島化』されたところは、環境の変化が起こったときには生物たちは逃げ場を失う危険性が大