環境影響評価の進め方に関する意見書
2002年1月25日
財団法人2005年日本国際博覧会協会あて
1 提出者 (住所) 愛知県海部郡佐屋町西保字西浦77−1
(氏名) 八田耕吉
2.意見及び理由
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「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価について」に書かれている内容は、「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価、実施計画書(方法書)」の「環境影響評価の項目ならびに調査、予測及び評価の手法」にあたる部分である。3ページに書かれている「現在」で言っている「修正評価書(案)」作成のためのものではない。平成11年10月に出された「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価書、青少年公園等編」の調査地域、項目などの不備を補うために、平成12年10月に「愛知青少年公園及びその周辺における環境調査結果について」、及び「2005年日本国際博覧会にかかわる環境影響について−検討状況報告書−」が出された経過がある。その後、大きく会場計画や輸送計画などが変更、環境への負荷が増大したにもかかわらず、「評価書の修正」で済まされる範囲ではない。
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「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価について」の「環境評価の項目(青少年公園地区)とその選定理由」と、平成11年10月「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価書」の「環境影響評価の項目ならびに調査、予測及び評価の手法」と比べても、「生態系」が抜けているなど大きく後退している。さらに、「環境要素−環境要因マトリクスの注」に書かれている「青少年公園は既に人的に整備された公園であることから・…「生態系−里地生態系」…については、環境要素から除外した」となっている。このことについては、「第6回万博フォローアップ会議」でも話題になり、意見を会場から言わせて頂いたが、「2005年日本国際博覧会基本計画」への意見で述べたものを再度載せておく。
転記部分
「自然への配慮」について、第6回フォローアップ委員会で、環境グループ長が、「貴重な種」などの生息地は「施設などの配置」にも十分考慮しているとの発言があったが、特に動物では生息地だけが守られても、その種が生息するための十分な条件とはなり得ません。工事中の土砂の流出などによる直接的な影響だけでなく、水の流れや日陰、直射、乾燥など、その地点だけを避けただけでは生物的な環境は保持できません。生物の発生、成長、生存は水槽の中で魚を飼うようにはいきません。逃げることもあれば、入ってくることもあります。お互いの生息環境がつながり、移動可能な距離内にいくつか点在し、自由に生物が行き来できる自然環境と多様性が必要です。フォロアップ委員会での2名の委員より「青少年公園は開かれた公園であるので、自然はない」という発言は、自然に対する認識がないだけでなく、今まで何度となく議論されてきた里山の重要性を理解していない発言である。海上の森の自然に対する理解は、曲がりなりにもされてきたが、里山の重要性についてはまだ点でしか捉えられていない。
K委員の発言「青少年公園は、最後の砦」は、自然度や地形的なことだけでなく、まさにわずかに残された里山的自然と開発によって壊された自然との境界線をさしている。トンボで見ると、海上の森のトンボは低山帯の山地型で、青少年公園を含めた長久手町のトンボは丘陵帯の種が多く見られる。現在日本では、長久手町などで見られる、山地、丘陵から平地にかけて川が開け、緩流になる地域の自然が都市開発などにより極端に少なくなっている。まさに、青少年公園を含む周囲の自然は、私達が後世に残さなければならない、最後の砦である。これ以上ダメージを与えると、修復は出来ないところまできていることを自覚し、回りの開発をも含めてストップし、自然の保護・保全のよき例として、海上の森と一緒に万博が創りだした新しい「21世紀型の自然の保全」の見本を世界に問うてみたらどうだろうか。「自然の叡智」として。
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「2005年日本国際博覧会に係わる環境影響評価書、青少年公園等編」、及び「2005年日本国際博覧会にかかわる環境影響について−検討状況報告書−」では、「注目すべき生物種」として扱われている。「環境影響評価の項目」に「生態系」の項が抜けているのは、海上の森における扱いと違って、明らかに「生態系の存在を青少年公園は整備された公園なので必要ないという判断と思われる。環境影響評価における「生態系」を、「典型性」、「頂点」としての生物種の保全として誤解されているようだが、小学校の教科書を開いて「生態系」の定義を今一度勉強してもらいたい。「生態系」は生物及び無機的環境により統合された生産者・消費者・分解者により物質の循環・交代をつかさどるエコ・システムである。生態系を保全するということは、物質循環、食物連鎖で学んできたように群集及びその構成者の存続が保障されなければならない。
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「予測及び評価手法、(2)動物、ア調査手法、注目すべき動物種」、「工事・存在・供用による影響」を「予測・評価」をしているが、「工事」では、「重機の稼動、切・盛土の土工、夜間照明」、「存在」は「土地の改変や工作物」、「供用」では「採取、騒音発生、夜間照明、農薬」と直接的な影響に絞られている。海上の森でも見られた、ボーリング調査との名目での工事や測量などによる人の入り込みなどによる影響、花火やレーザー光線、夜間営業による照明や騒音が鳥や夜行性動物、昆虫などへの追い出し、回避への影響が考えられる。例えば、ギフチョウの採取は工事期間には入ることが出来ない公園内で、供用期間中に採取による影響を考えるよりも人の多さで逃げてしまうことの影響を予測すべきである。もっとも、アセス調査をする調査者による影響は、ベイトトラップによる影響をも含めて影響予測を出すべきである。
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夜間照明の影響は、照明時間の延長が暗期時間の短縮などによる発芽抑制、花芽形勢、成長阻害など植物に影響を与えるだけでなく、や後生動物だけでなく、動物全般の追い出しと画などの害虫発生にも影響が出てくる。
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直接的な池の改変による水質、土砂の流入などの影響を抑えても、環境の変化、水位及び移植、移入、特にコイなどの放流を含め、多(他)自然型、近(金)自然工法などを取り入れること自体が変化を与えることを考慮に入れなければならない。現在ある生態系に手を加えれば、たとえ良い環境を作り出しても、現在ある生態系のバランスを損なう。
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「環境要素−環境要因マトリクス」の注に、「河川等の取水」、…「排水の発生」、…「エネルギーの使用−石油系の燃料の使用」については除外した」としているが、「2005年日本国際博覧会基本計画」には、循環型社会、ゼロエミッションが書かれている。下水については長久手町へ持ち出し。ゴミについては、廃棄物として「発生抑制、分別の徹底、再資源化」と言っているが、飲食等で出るゴミを含めて、会場内での処理なく、市町村への持込を考えているようでは、ゼロエミッションのモデルとしてなりえない。もちろんエネルギーやCO2の排出量の負荷を森林などの炭酸同化作用だけではまかなえないだろう。1500万人が1時間20のCO2を排出すると、20〜30リットル×12時間×1500万人=36億〜54億リットルになるが、森林の吸収率を計算しなくても、おそらく会場のCO2濃度は名古屋市の350〜400ppmvをはるかに上回ることは充分予測される。
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「予測及び評価手法」でも、相変わらずの「実行可能な範囲内で回避・低減」と、「影響が不確実であると判断された場合には、追跡調査」と「工事による影響」の項目だけでなく、「存在による影響」、「供用による影響」でも述べられているが、果たして追跡調査を行った結果をどのような形で反映できるのでしょうか。今度日本で新たに万博が計画された時にでも使うと言うのでしょうか。