万博アセスメントは何のため?
ホトケドジョウのお引越し
2004年10月20日付朝日新聞夕刊(愛知版)に、「疎開のホトケドジョウ スクスク」と題する記事が掲載された。05年3月に開催が迫る愛知万博の瀬戸会場内に生息する、絶滅危惧種指定のホトケドジョウが県内2力所の施設に移されていると報じたもので、これら作業が公表されず行なわれたことに対し、地元市民団体が、博覧会協会、愛知県などに、抗議と要望書を提出した。
問題となった瀬戸会場内の通称・ホトケ沢周辺にはシデコブシ・ホトケドジョウなどの希少種が数多く生息し、過去にNACS-Jはじめ地元自然保護団体の意見などにより、会場計画の見直しがなされた経緯がある。
住民参加の拡大などを目的に改正された「新環境アセスメント法」の先取りとして実施された愛知万博の環境影響評価報告書では、この地域におけるホトケドジョウ生息水域の直接改変はないので、影響は「回避・低減されているものと判断した」と書かれ、追跡調査項目からホトケドジョウは省かれている。にもかかわらず、なぜ移さなければならなかったのか?
抗議に対し博覧会協会は「ホトケドジョウの生息数も減少が認められるような状況になく、モニタリンク委員会の開催も必要ない」と回答を寄せているが、外部評価の重要性が指摘されている中、一般市民を含んだ調査を行なうことこそが環境万博へのモデルとなろう。(八田耕吉/名古屋女子大学教授)
▲ホトケドジョウ(写真:上杉毅)