意見書

平成13年4月 日

 

名古屋都市計画 都市高速鉄道 東部丘陵線

豊田都市計画 都市高速鉄道 東部丘陵線

環境影響評価準備書への意見

愛知県建設部都市計画課

名古屋市住宅都市局都市計画部特定交通施設整備室 殿

 

意見

 

上記「環境影響評価準備書」は,以下の点において、問題が多く見られるため再度調査のやり直しと修正準備書の作成を求めます。

1.調査期間は単年度のみであり(H.10年秋の予備的な調査と、12年の春の補足的な調査が含まれるが)、アセスメント調査にしてはお粗末である。

2.二酸化窒素および交通量調査は、市民グループがやった調査結果を参考に予測結果の見直しをおこなうべきである。

3.何がどこにいるといった(リスト)だけの従来型のアセスであり、生態系を考慮した新アセスの手法に沿っていない。

4.オオタカ調査のデータは、市民グループおよび野鳥愛好家が持つデータのほうがはるかに多い。

 

上記意見の具体的な問題点について,以下に記す。

6-1-11147) 二酸化窒素の建設機械の稼動等による影響の予測を基準値以下とされているが、よほどの低公害車の導入がない限り達成できるとは考えられない。長久手町内における道路工事中の測定結果が市民グループの一斉測定で109ppbと測定されていることからも現実性がない。従来型のアセスのような、「実行可能な範囲において低減が図られるものと判断」、「窒素酸化物排出量の削減に向け、低公害車の普及のための…などの総合的施策の推進に努めていく考えである。」とまったく内容のないものになっている。きちんと調査を行って、予測をおこなうべきである。

6-1-23159) 交通量と車速」で車速を40〜60km/hとしているが、現在の渋滞状況をまったく考えにいれない予測は、まったく現実的でない。この車速で換算されたバックグランド濃度でなく、排気の多い交差点を中心に実際の値を導入すべきである。日進市や長久手町の市民がおこなった二酸化窒素の値が高かったダンプ街道の値(.6から0.ppm)から想像しても、大幅に増えると考えられる。人体等に影響を及ぼすのは平均したものでなく、長時間被爆されたのが蓄積されてくる結果として現れるものである。

6-2-10174) 建設作業騒音の予測結果を最大値83と82dBとして、「建設工事区域の…規制基準値(85dB)を下回っており、国等の環境保全施策との整合性が図られている」と書かれているが、現実83dBがそこに住んでいる住民の許容限度をはるかに超し、精神的肉体的な影響をまったく無視している。住民に対する思いやりや心が欠落した愛知県および名古屋市の環境行政への取り組み方が問われる。

6-9-1253)動物相調査の調査期間が年間を通しておこなっているのは、平成11年の1年間のみで、動物相の調査にしては調査日も非常に少ない。さらに、10年は10月の2日間のみである。12年は日程から見ると、補完的な調査と思われる。このような短期で、調査回数の少ないのでは十分な調査がやられたとは思われない。

6-9-19271) 底生動物の調査は、12月の一度だけの調査である。多くの水生昆虫類の幼虫を把握するにはほぼ適切な時期であるが、秋に羽化,産卵するものにおいてはサーバー・ネットにかからず、流出することを考慮にいれるべきである。採集法も津田ベックα法(定量的な採集法)でなく、β法(サーバ・ネットを使われているので)でやられたことは一歩前進したが、採集時期を最低4〜6回程度おこなうべきであろう。特に移動性の強いトンボ類を扱うためには、採集地域の拡大と数年間の調査を行わなければ十分ではない。最終地点を河川4地点と池1地点と書かれているが、調査面積および各調査地点での生データがないために、従来のアセスで指摘されているリストだけで,生態系を考慮した新アセスの手法に沿っていない。個々の種名やデータの間違いを訂正をおこなっても、基本的な考え方や手法に誤りがあっては正しい評価(アセスメント)につながらないので、あえて今回は指摘しない。指導・助言を頂いている学識経験者や専門家のレベル向上が、先決であろう。

6-9-28280) 食痕調査は8月中旬の調査だけであり、幼鳥の巣立ち後と考えても,巣の下にいってペレットなどを採取することは影響を与えるだけでなく、営巣期を含んだ食性全体を把握するにはあまりにも偏りがありすぎる。猛禽類の食痕に詳しい新井真氏によると、メス親が餌採りに出るこの時期にはカラスが対象になることが多いといわれていたことにも一致していると考えられる。「スズメのような小さな鳥は食痕が残りにくく、…見つけるのが困難」とあきらめないで、地道に調査を続けている市民が持つ調査データにも目を向けて、より信頼度の高いものに高めていくべきである。「餌となりうる鳥類の調査」も、これだけでは何の資料にも活用されることはないが、市民が持つデータを謙虚に受け入れれば信憑性も高めることができる。

6-9-33285) 「予測および評価の結果」では,「建設工事中もこれらの主の生息環境は維持できるものと考えられる」と、「計画路線の存在による上記主の生息環境に与える影響は小さいと考えられる」に終始しており、海上の森でのアセスのように消失率さえも示されていない。最悪なのは、「評価結果」では「計画路線による生息環境への影響は低減が図られるものと判断した」と数年前のアセスに逆戻りしている。藤前干潟の時のように「環境への影響は明らか」とされた時には、人工干潟のような代償措置もなく、破綻をきたすであろう。

 

万博などにしがみつかず、愛知県、名古屋市独自の視野に立った立地を含めた再検討をおこなうべきである(例えば臨港線)