長久手自然クラブ夏休み企画 2 001.8.7
於:長久手町杁が池体育館
杁が池昆虫教室
−昆虫採集と標本作り−
長久手町の自然
長久手町は、木曽川の氾濫により山から運ばれた砂が堆積した濃尾平野の東の端にあたります。町の中央を南東から北西に斜めに横切る香流川と、水田などが広がる平野に、雑木林(二次林)が残る4つの低い丘が点在しています。この丘を中心にため池と湿地があり、このような所に、現在のようにたくさん家が建ち並ぶ前の自然が豊かな長久手(湿地の意味)町にすんでいた動植物が残されています。
地質は砂と礫(れき:砂よりも大きく、石よりも小さい粒)が表面をおおっているために酸性でやせています(植物が育つための栄養が少ない)。山(丘)に降った雨は木や草を育てますが、栄養が少ないためにあまり大きくなりません。しかし、しみだす水は少ないがいつでもじめじめした小さな湿地を造ります。ここには、背が低いイネ科やカヤツリグサ科の植物や昆虫から栄養を取る食虫植物のモウセンゴケなどが生えています。
昆虫の種類も平地だけでなく、丘や雑木林、湿地と変化に富んだ環境を持つため、チョウ類60種、カマキリ・バッタ類30種、トンボ類78種など多くが記録されており、トンボでは日本での記録(207種)の約4割、愛知県の記録(93種)の8割以上が長久手町で見られます。その中には、最近少なくなって貴重なギフチョウ、ヒメヒカゲ、アカシジミ、ウラゴマダラシジミなどのチョウや、環境庁などが絶滅の恐れがあると保護を呼びかけているマダラナニワトンボや里山に今まで普通に見られたといわれているハッチョウトンボやベニイトトンボなども見られます。かつて、長久手町に流れる香流川にも多くいたゲンジボタルやハグロトンボも、水質の悪化や農薬のためにまったく見られなくなりました。
杁が池
長久手町には多くのため池が残されており、小鳥やトンボたちにとっても貴重な水辺となり、私たち人間にとっても自然との出会いの場ともなっています。ため池は農業用の灌漑用水(田んぼに入れる水をため、必要なときに流す)として使われていたが、田んぼが少なくなり、田んぼに入れる水を愛知用水(1961年に木曽川の水を知多半島の先にまで流す用水を造り、その流域の市町村にも給水)に頼るようになったため、1965年ごろからため池は少なくなっています。お隣の名古屋市では、30年前まではため池が360ありましたが、現在はその1/3ぐらいになりました。
杁が池はコンクリートによる護岸がされないまま岸辺の植物が残されており、自然の状態が都市公園としてはかなりよく保たれています。高崎(1993)によると、隣接した沼地を含めて26種のトンボが観察されています。
昆虫採集と標本作り
採集した虫たちを無意味に殺すのではなく、生きた虫たちやその虫たちが生きている自然からいろいろな事を学び取ってください。虫たちの名前を知ることは、その虫に親しみがわき、もっとその虫のことが知りたくなります。採集した虫には採集した場所と日時を書いたラベルをつけ、そのときの状況(何の花にとまっていたかなどの周囲の環境)を忘れないうちに記録しておきましょう。そのためにも、上手な採集法と正しい標本の作り方を学びましょう。
採集の仕方
飛んでいる時 チョウ、トンボ
花に止まっている時 チョウ、甲虫(カミキリ、ハナムグリ)
木に止まっている時 チョウ、甲虫(カナブン、クワガタムシ)、ハチ、セミ
地面に止まっている時 チョウ、甲虫(ハンミョウ、オサムシ)
ビーティング法(木の枝に止まっている) 甲虫(カミキリ、タマムシ、ゾウムシ)
スウィピング法(草むらにいる) バッタ、ヨコバイ、甲虫(ハムシ)
誘引法(餌におびき寄せる) 甲虫(オサムシ、シデムシ)、ガ、ハエ
夜間採集(光に集まる) ガ、甲虫(カブトムシ、ゴミムシ)、トビケラ、カゲロウ
越冬採集(冬に土や朽ち木中から掘り出す) クワガタムシ、オサムシ、スズメバチ
ツルグレン法(土や落ち葉の中にいる) トビムシ、ダニ
採集用具
捕虫網、三角カン(三角紙入れ)、毒ビン(酢酸エチール)
たたき網、吸虫管
標本作成用具
昆虫針、とめ針(まち針)、展翅板(展翅テープ)、標本箱(ナフタリン)
展足板(発泡スチロール)、平均台、柄付け針、注射器
この資料は、1993年出版の「ながくて昆虫記」(長久手町教育委員会・著者高崎保郎)より抜粋したものに八田が加筆したものです。