河川の昆虫と保全−東海地方における湿原、河川、ダム、里山−

      ○氏名 八田耕吉・内田臣一・近藤繁生・西本浩之

東海地方における河川、湿原、ダム、里山などの環境問題を中心に、水生昆虫相の変遷と大型公共事業における生物への影響を例に河川昆虫の保護について述べる。
  東海地方では近年、長良川河口堰、徳山ダム、木曽川道水路、設楽ダムなどの大型公共事業による環境破壊が生物に与える影響が心配されている。2005年に開催された「愛知万博」で里山「海上の森」の保全に多くの課題を残した名古屋市で、来年(2010年)「生物多様性条約締約国会議(COP10)開催される。東海地方で水生昆虫を研究している研究者の目から議論する。

八田耕吉(名古屋市)「東海地方の河川および里山(湿地)での環境問題」

内田臣一(愛知工業大学)「東海地方の河川におけるカワゲラ類の変遷」

近藤繁生(愛知医科大学医学部)「河川とため池の水環境の変化とユスリカ類」

西本浩之(愛知県小牧市)「特殊環境におけるトビケラ類」

東海地方の河川および里山(湿地)における環境問題

愛知県 八田耕吉


 東海地方では、長良川河口堰、徳山ダム、木曽川道水路、設楽ダムなどの大型公共事業による環境破壊により、現在も生物への影響が心配される。2005年に開催された「愛知万博」では、里山の保全に多くの課題を残した名古屋市であるが、2010年(来年)に「生物多様性条約締約国会議(COP10)が開催される。東海地方における河川、湖沼、湿原、里山などで起きている開発が水生昆虫などの生物相にどのような影響を及ぼしているかを中心に、東海地方で水生昆虫を研究している研究者の目から、水生昆虫への影響や保護について述べていただく。
  最初に、東海地方で起きている環境問題が昆虫の生息に及ぼしていると思われるいくつかの事例を紹介する。

河川環境の変化 止水化、流水量の安定化、底質の変化
 水生昆虫相の遷移  東海地方の主要河川(40年間)
 ダム建設による河川昆虫への影響  揖斐川(徳山ダム)と豊川(設楽ダム)の遷移
                  矢作川、木曽川のオオシロカゲロウの大発生
 粘土層の堆積  庄内川、愛知用水、長良川(ワンド、淡水化)
  パイプラインによる用水路のヘドロ化  ヘイケボタル
  農業用水路やため池の消失  水生半翅類、イトトンボ類
  河川敷内の整備、公園化  ツマグロキチョウ、トンボ池の遷移

里山の開発、整備
 海上の森  ギフチョウ、トンボ相(67種)
  湿地の減少  ハッチョウトンボ(万博記念公園)、ヒメタイコウチ
  都市に残された雑木林  ヒメボタル(名古屋市相生山)
  ため池の消失  ギンヤンマ、ベニイトトンボ
  公園、庭などの庭木の植栽  アメリカシロヒトリなどの害虫大発生、アオマツムシ