2005年日本国際博覧会基本計画」への意見
20011225

経済産業大臣 平沼赳夫

(財)2005年日本国際博覧会協会会長 豊田章一郎 および坂本総長
愛知県知事 神田真秋様

万博アセスに意見する市民の会 八田耕吉


 テーマ「自然の叡智」に学ぶと謳っているが、具体的には自然を壊して再生する技術の展示としか思えない。「事業企画の重点」に述べられている中で、「自然」という言葉が2回出てくる。「@生命、宇宙など未知の自然へのアプローチ」では、「自然科学の最先端技術を提示」と自然科学の進歩を展示し、自然の偉大さに驚嘆するという従来型の万博である。「A自然とともにある暮らしの喜び」も、「衣・食・住、文化、生活環境」と「自然との調和を提唱」と、住宅などの生活展示場である。さらに、「環境への考え方」では、「A自然地形・素材の活用」とされ、自然環境への配慮というよりも活用に重点をおいている。例えば、「事業計画」の中でも、自然への配慮が必要と思われる「地球市民村」や、「森林体感ゾーン」でさえも、「森林の活用」を「自然の保全」と勘違いしている。「オオタカ検討会」、および「万博検討会」の委員が「活用」と「保全」は同じであるという発言からしてもう充分伺える。
 「自然への配慮」について、第6回フォローアップ委員会で、環境グループ長が、「貴重な種」などの生息地は「施設などの配置」にも十分考慮しているとの発言があったが、特に動物では生息地だけが守られても、その種が生息するための充分な条件とはなり得ません。工事中の土砂の流出などによる直接的な影響だけでなく、水の流れや日陰、直射、乾燥など、その地点だけを避けただけでは生物的な環境は保持できません。生物の発生、成長、生存は水槽の中で魚を飼うようにはいきません。逃げることもあれば、入ってくることもあります。お互いの生息環境がつながり、移動可能な距離内にいくつか点在し、自由に生物が行き来できる自然環境と多様性が必要です。フォロアップ委員会での2名の委員より「青少年公園は開かれた公園であるので、自然はない」という発言は、自然に対する認識がないだけでなく、今まで何度となく議論されてきた里山の重要性を理解していない発言である。海上の森の自然に対する理解は、曲がりなりにもされてきたが、里山の重要性についてはまだ点でしか捉えられていない。

K委員の発言「青少年公園は、最後の砦」は、自然度や地形的なことだけでなく、まさにわずかに残された里山的自然と開発によって壊された自然との境界線をさしている。トンボで見ると、海上の森のトンボは低山帯の山地型で、青少年公園を含めた長久手町のトンボは丘陵帯の種が多く見られる。現在日本では、長久手町などで見られる、山地、丘陵から平地にかけて川が開け、緩流になる地域の自然が都市開発などにより極端に少なくなっている。まさに、青少年公園を含む周囲の自然は、私達が後世に残さなければならない、最後の砦である。これ以上ダメージを与えると、修復は出来ないところまできていることを自覚し、回りの開発をも含めてストップし、自然の保護・保全のよき例として、海上の森と一緒に万博が創りだした新しい「21世紀型の自然の保全」の見本を世界に問うてみたらどうだろうか。「自然の叡智」として。

循環型社会、ゼロエミッションが書かれているが、下水については長久手町へ持ち出し。ゴミについては、廃棄物として「発生抑制、分別の徹底、再資源化」を言っているが、飲食等で出るゴミを含めて、会場内での処理なく、市町村への持込を考えているようでは、ゼロエミッションのモデルとしてなりえない。もちろんエネルギーやCO2の排出量の負荷を森林などの炭酸同化作用だけではまかなえないだろう。1500万人が1時間20CO2を排出すると、2030リットル×12時間×1500万人=36億〜54億リットルになるが、森林の吸収率を計算しなくても、おそらく会場のCO2濃度は名古屋市の350400ppmvをはるかに上回ることは充分予測される。
 「衛生管理」として「会場内の害虫駆除」が書かれているが、ゴキブリ、ネズミ、ハエなどの駆除は、館内だけでなく、広く会場全体、そして周辺にまで広げなければ充分に駆除が図れるとは思えない。春から秋までの期間中には、会場内の毛虫や蚊対策も行わなければならないでしょう。害虫という分類は人間が自分勝手なわけ方をしているだけで、撒かれる殺虫剤やトラップなどは無差別に殺戮するでしょう。如何に、人間の叡智を絞っても今まで絶滅できない害虫、そして、その無差別殺戮をおこなう農薬によりトンボやホタル、メダカやドジョウなど、多くの生物たちが絶滅の危機にあっているかということを学ぶことこそ「自然の叡智」であろう。
 もう一度、立ち止まって、「2005年愛知万博」が自然を守るということの大切さを世界に発信するために、踏みとどまったことを世界に示したほうが意義深いものとなるでしょう。