万博で危機にさらされる生物達(2001.11.24)
−万博アセス調査の不備−
八田耕吉
1.動・植物の豊富さから何が見えるか。
−西・南地区は海上の森の縮図
愛知県全体の0.1%の地域に、植物は愛知県記録種(2,200種)の約半分、動物は愛知県記録種(6,600種)の40%以上
海上の森(540ha、H.11.10評価書案):植物1,077種、動物2,715種、その内昆虫2,311種
会場候補地(南、西地区、15ha、H.14.6修正評価書):植物950種、動物2511種、昆虫2314種
−青少年公園の調査は不十分
青少年公園(220ha、H.11.10評価書案):植物397種、動物690種
会場候補地(158ha、H.14.6修正評価書):植物594種、動物546種
2.注目すべき種が多く見られることから何が見えるか。
−ホットスポットとしての里山
海上の森:植物49種、動物47種
青少年公園:植物22種、動物24種
3.都市部(名古屋市)に近い自然から何が見えるか。
−平野部(宅地、田・畑)に岬状に張り出した丘陵地域
開発により失われた平地、低山地、丘陵型の生物が残っている
ムササビ、オオタカ、カワセミ、メダカ、ホトケドジョウ、カワバタモロコ、サワガニ、ギフチョウ、テングチョウ、ルリタテハ、オオカワトンボ、キイロサナエ、ハッチョウトンボ、チョウトンボ、ヒメタイコウチ、コオイムシ、ハルゼミ、ゲンジボタル
4.多様な生態系をもつ里山が理解されていない。
−同一な環境の複合体(地域生態系)は、二つと存在しない
海上の森:ムササビ、ムカシヤンマ、ダビドサナエ、オジロサナエ、ニシカワトンボ
青少年公園:ハグロトンボ、アジアイトトンボ、セスジイトトンボ、ベニイトトンボ
−水辺の重要性
海上の森には、海や千潟がないのに、鳥類が183種、トンボ類が67種も見られる
5.環境アセスメントが不備
−里山生態系に対する無理解
多様性に対する考え方の誤り
−生態系の上位性、典型性の取り扱いが間違っている
種の保全でなく、生態系全体を如何に保護するかが必要
ゲンジボタルの養殖やカンアオイの移植によって自然は再現されない
−生態系保護の視点が抜けている
(1)
環境への影響は直接改変域だけでなく、広い範囲で
個体群保護に必要な条件(面積、個体数、環境)がわからないままに地形や水系が壊されると、動植物の生息などに大きな影響を与えることが予測される。
(2)
保護・保全とは
回避・低減策の具体的な検討なしに代償措置を考えるのではなく、如何に回避・低減する計画にするかである
(4)追跡調査
不確実な予測を追跡調査と称するモニタリングでは済まされない
追跡調査の結果、影響があるとされたときには改変された環境を再現できない
−旧(閣議)アセス法から脱却していない