「中部国際空港建設事業及び空港地域開発用地埋め立て造成事業
に関する環境影響評価準備書」に対する意見書
1999年2月14日
中部国際空港株式会社
代表取締役社長 平野幸久 殿
愛知県公営企業管理者
企業庁長 清水正一 殿
提出者
住所 愛知県海部郡佐屋町西保西浦77−1
氏名 八田耕吉
「中部国際空港建設事業及び空港地域開発用地埋め立て造成事業に関する環境影響評価準備書」について、自然環境の保全の見地から、次のとおり述べます。
意見
1.「万博」で関連事業との連携が話題になっているが、本事業の連携も準備書の日を合わせるだけの連携になっている。他に仕事を持っている一般市民にとって、準備書の日が一緒という事は3倍読み込み等の負担がかかることである。公表は同時期に行っても、意見書など締め切りには余裕を持った計画を。分散をはかるためであるとしか、勘ぐれない。
2.本来、実施計画書に対する意見を聞いた後に項目・手法の検討を行い、環境影響評価を実施することになっている。1年間の調査も終わらないうちに準備書が出ることは、調査の結果を待たずに結論を出してきた従来の「アワスメント」と同じであることを自ら示していることである。
以下に、陸生生物を中心に自然環境保全の見地から意見を述べる。
1.空港島の存在が鳥類の生息に及ぼす影響」について、空港等周辺の採餌異存が少ないことや、餌生物の影響が少ないことを挙げている。生物の生息環境はただ単に採餌環境だけではなく、広く行動範囲を必要とする鳥などでは周辺環境が大きく影響することが知られている。「陸生生物の重要種の保全目標」に生態系の上位種と定義している鳥類を挙げるのならば、底辺となる種の生息環境に対しても配慮した保全処置をとる案を示すべきである。
2.渡り鳥などの中継地での役割は、これから渡っていくためのエネルギーの補充に重要な役割も持っている。回りの景観が現在挙げられている種などの生息できる環境とはほど遠い環境になると予測される。餌となる生物の生息にはその地域だけではなく、水田や森林などの広い生息環境をも含めて考えなければならない。事業範囲を含んだより広い範囲の調査を行うべきである。
3.ワシタカ類やカモメ類などの航空機との衝突を「生息への影響は小さい」と書かれているが、これは「生存」を脅かすものであり、「バードパトロールを実施し衝突発生頻度の抑制」が追っ払いにより「生息」を脅かすことになる。「バードパトロール」という行為は、ハエを追う行為と同様基本的な解決にはならない。
4.共存することが非常に危険な事故を多発する原因になることと理解するならば、彼らが集まる地域をできるだけ避けなければならない。なぜなら、現在ある環境が彼らにとってより良い環境であるのだから。その場を奪うことは、彼らとの共存を否定したことになる。
5.如何に「南部沿岸部に比べ北中部沿岸でより多数が出現」とか、「「沖合に比べ沿岸域を中心とした範囲でより多く見られる」といっても、「知多半島西岸域におけるカワウの出現状況」、「カワウの飛翔奇跡レーダー」を見る限り、明らかに「空港島」と「対岸部埋め立て地」の間に集中している。これだけ集中して出現するものを追っ払うことは、彼らの生存を危うくするには十分である。たとえ、追っ払っても衝突などの回避は皆無にすることはできない。もともと彼らがいつも通り道にしていた所だから。