再度、環境万博を謳う

愛知万博の「基本計画」には生態学的視点が欠けている

万博アセスに意見する市民の会 八田耕吉

 

1.基本理念と事業計画には大きなギャップがある。

2.自然の創造や復元の実験場は、現在ある自然を壊して行うことではない。

3.動植物の生息や里山の生態系保護が極めて軽視されている。

4.4ヵ年にわたる工事や開催時の影響が、水系や動植物の生息などに大きな影響を与えることが予測される。

 

I.里山生態系に対する誤解

どこにでもいるといっているうちに開発が進み,ドジョウやホタル、クワガタムシが珍しくなった。同様に、里山が貴重な自然になり、そこに棲むギフチョウやムササビ、オオタカなどの多くの生き物たちがすみかを奪われ、希少種、絶滅危惧種、危急種に格上げされてきた。

1.都市に近い里山自然に対する無理解

雑木林、草地、田畑、あぜ道、小川、湿地、ため池などの小さな生態系の集まりで、それぞれの生態系は非常に壊れやすい

2.多様性に対する考え方の誤り

特異性の高い集団がモザイク状に入り組んだ植生環境の駆け引きの結果、その境界に多様性を高める林縁環境を生み出すものである。ただ単に種類数が多いとか、貴重種が多いというものではない。

 3.里山の成り立ちは、「人が手を入れる」ということではない

里山は、人が意図的に作り出したものではなく、人と自然との共存により自然につくられたものであって、つくり出そうとしてつくられたものではない。

現在の大型機械などによる開発は、里山で行っていた耕作などとは時間、労作力、エネルギー量などのスケールが違う。

 4.同一な環境の複合体(生態系)は、二つと存在しない(地域生態系の保護)

長い時間をかけて人と自然がつくり出した共存システムとしての里山は、その地域特有の生態系である。たとえ似た植生環境はつくり出すことができても、そこに棲む多様な生物相を再現することはできない。

 5.生態系保護に対する認識がない

道路や会場施設などの建設が、個体群保護に必要な条件(面積、個体数、環境)がわからないままに地形や水系が壊されると、動植物の生息などに大きな影響を与えることが予測される。

 

 

 

 

 II東海丘陵地域の特徴

  1.動・植物の豊富さ

    愛知県全体の0.1%の地域に、植物が1,100種(愛知県記録種2,200種)

    昆虫2,300種(愛知県6,600種)

  2.希少種が多く見られる

    注目すべき植物48種、動物45種

    保全上重要性の高いエリア17生息地が確認されている

3.都市部(名古屋市)に近いところにとり残された自然

    平野部(宅地、田・畑)に岬状に張り出した丘陵地域

 

   1)トンボの豊富さ(地形・地質・水系)

    海上の森には、海や千潟がないのに、鳥類が183種、トンボ67種も見られる

   2)開発により多くの自然が失われた低山地が残っている

    山地型(海上の森)ムカシヤンマ、ダビドサナエ、オジロサナエ、ニシカワトンボ

    丘陵型(長久手)オオカワトンボ、アオモンイトトンボ、セスジイトトンホ

    平地  ベニイトトンボ、アジアイトトンボ

   3)絶減が危慎される種

山地から平地にかけて川が開けて、緩流になるところが河川攻修などにより少なくなっている

     オオカワトンボ、キイロサナエ、オナガサナエ                                                                                     

   落葉広葉樹を主体とした雑木林の衰退

     ムカシヤンマ、ハネビロエゾトンボ

池では、遠浅で岸辺に水生植物が繁茂しており、東海地方においては後背地がやせた土壌の赤松林をもつ池が少なくなっている

     マダラナニワトンボ