万博の理念って、何だっけ

 万博アセスに意見する市民の会 事務局長 八田耕吉(62)

 

先日、万博協会は万博理念の継承として、平成18年6月13日に基本理念継承発展検討委員会で余剰金の一部(10.5億円)を使い、市民活動又は行政と市民との協働活動を支援することを発表した。

 万博開催には多くの市民および団体がボランティアとして、行政の音頭とりのもと参加した。尤も、自主的に万博に参加した方も多かったと思うが、環境万博を謳っておりながら、海上の森を中心とした地元の自然保護団体を始め、日本を代表する中央の自然保護3団体(WWF,自然保護協会、日本野鳥の会)の参加はなかった。

 今回の分配金報道を見て、天下り外郭団体がNPOに受け皿を替えただけではと感じたのは私だけだったでしょうか。中国で10年来の付き合いのある、ある省の環境保護局の局長と3年前に話したことを思い出します。彼は私の「最近のODA(政府開発援助)は政府間協力でなく、NGOを通した援助が中心となる」といった話に、「3人おればNPOはできる。いつでも局の幹部とできる用意がある」と話されたことを思い出した。そのとき、日本の海外や国内で理想に燃え、まじめに取り組んでいるNGONPOの方たちになんと失礼なことをと憤りを感じた。しかし、今では行政や一部の市民のなかにもこのような考えをお持ちの方がいることを図らずも見ることとなった。

 私が住んでいる近くの津島市においても、6月25日に万博理念継承の一環でモリゾウとキッコロが天王川に来て記念撮影やヨシのいかだを作って浮かべるといったことが地元の中学生を動員しておこなわれた。聞くところによると名古屋市の堀川でヨシを使った浄化をやっていることが、万博会場で行なわれた「ヨシ原会議」で紹介され、結果を見ないままに水質浄化のモデルとして一人歩きしているようだ。この浄化を手がけた大学の先生に会い、成果を聞く機会があったので聞いたところによると、はっきり失敗であったといわれた。その方には、結果に対して研究者としてもきちんと説明する責任があることはいわせていただいた。近く、きちんと市民に対しても説明されることを望む。「ヨシのいかだ」による水質浄化が難しいことは河川や水質浄化にかかわるものの中では常識的に言われているが、一般市民には環境博のイメージが強烈で地道な水質浄化に取り組んでいる自然保護団体や環境保護団体の活動とのずれを感じるのは私だけではないでしょう。

 今までひっそりと草陰で咲いていた小さいボランティアという花も、万博で陽の目を見たことは良いことだが、本来の姿を忘れて行政の街づくり、ごみや自然再生などの計画作りの下請け業者へと変身するNPOにならないよう原点に戻って考えることこそ「理念の継承」となるのでは。