佐屋町の環境を考える会 2002年2月17日
総会記念講演
尾張西部田園地帯における自然
名古屋女子大学 環境生物学 八田耕吉
日本では、もはや自然が臨めないのだろうか。自然の定義や自然保護の考え方を再認識し、都市近郊における自然について考えてみよう。
I.自然の定義
日本の自然(里山)、欧米の自然(森林)、未開発地域の自然(原生自然)
遷移、極相、撹乱
自然保護と自然の保全(回避、低減、代償)
II.自然に対する誤解
どこにでもいるといっているうちに開発が進み,ドジョウやメダカ、ホタルなどの多くの生き物たちがすみかを奪われ、希少種、絶滅危惧種、危急種に格上げされてきた。
1.都市に近い里山(里地)自然に対する無理解
雑木林、草地、田畑、あぜ道、小川、湿地、ため池、そして人家などの小さな生態系の集まりで、それぞれの生態系は非常に壊れやすい。
2.多様性に対する考え方の誤り
ただ単に種類数が多いとか、貴重種が多いというものではなく、多くの里地生態系の構成要素がモザイク状に混じりあった結果、多様性を高める。
3.里山の成り立ちは、「人が手を入れる」ということではない
里山は、人が意図的に作り出したものではなく、人と自然との共存により自然につくられたものであって、つくり出そうとしてつくられたものではない。
4.同一な環境の複合体(生態系)は、二つと存在しない(地域生態系の保護)
長い時間をかけて人と自然がつくり出した共存システムとしての里山は、その地域特有の生態系である。たとえ似た植生環境はつくり出すことができても、そこに棲む多様な生物相を再現することはできない。
III.都市における自然
里山、ため池、そして「春の小川」
1.自然(川)を知ろう
春の小川はさらさらいくよ(浄化作用)
河川と河川敷はセット
2.真の自然(川)とは
ホタルのいる川はきれいな川だろうか
赤いコイの泳ぐ川に疑問を感じて
3.都市の自然(川)の特徴
富栄養化 快適な生活(トイレの水洗化)、大量発生(ユスリカ、アオコ)、化学肥料
単調な生態系 三面張り工法、ショート・カット、農薬、除草剤
水量の減少 川から用水に(大切な水が不要なものに)、パイプ・ライン
大雨による洪水 ため池、水田、畑地の減少
川の私物化 養殖アユの放流、入川料、移入・移植
変な動物愛護精神 コイの放流、ホタルの養殖、キャッチ・アンド・リリース
川の再生 ビオトープ、多自然型工法
IV.今、何をなすべきか
1.それぞれの役割
研究者(審議委員) 第三者的発言、情報・知識の提供
市民 住民参加、ネットワークづくり
自治体 情報公開、公共事業の必要性の再考
企業 汚染者負担の原則、ISO認証
2.私たちができる事
森や山を残す 浄化(大気、水)、貯水効果
エネルギー、資源、水のムダ使いをなくそう 節電、節水
ゴミの発生抑制 4R(断る、減らす、再利用、再資源)、食べ残し
環境への関心 環境教育・実践(自然観察会、ソーラ発電、雨水利用)