西南中国の環境事情
八田耕吉
中国の地方おいても急速に広がっている公害の実体を雲南省および貴州省で、環境保護局との共同研究をとおしてみたことを中心に、急速な市場経済の導入によりもたらされた水質汚濁、大気汚染、ゴミ問題を中心に生活環境・衛生について述べる。
1.雲南省の省都である昆明市においては、富栄養化した昆明湖で国立武漢水生研究所が取り組んでいる再生事業を中心に、飲料用水源ダムの建設計画と下水浄化計画について。
2.貴州省の省都・貴陽市では、水源としている大規模ダムの富栄養化対策、石炭火力による大気汚染の現状と日本の円借款によっておこなわれている現場の視察をとおして。
3.内陸部に位置する農村の現状を、現在までにおこなってきた浄化対策を中心に、興義市のカンナ麺工場の排水による水質汚染と大規模ダムの建設を。
4.大都市におけるゴミ処理の現状を、昆明、貴陽両市の取り組みについて。
I.水質汚染問題
1.水質汚濁(河川、湖沼)
特徴 高pH(8.0〜9.0)、高硬度(150〜300)、低い珪酸濃度(2〜7mg/l)
PO4−P(0.02〜0.42mg/l)、NO2+NO3−N(1.4から10.0mg/l)
南盤江 PO4−P(0.42mg/l)、NO2+NO3−N(10.0mg/l)が高い
2.富栄養化対策
1)昆明湖
西山の脚下に拡がる高原の断層陥落湖で、面積は琵琶湖の約半分(約300km2)、深さは最大10m(平均4m)の浅い湖で、昆明市の重要な水源となっている。昆明市に近い北端部(6km2)が都市下水の流入(9億m3/年)により富栄養化しており、湖全体にアオコが大発生している。中国における3つの国家重要水質汚染地域のひとつに指定され、現在武漢水生研究所
(国家級)が水質浄化に取り組んでいる。
2)百花湖、紅楓湖
富栄養化対策として日本の環境省と中国貴州省環境保護局による中日環境保護局合作支援を行っている。
3.水源ダム(発電所)建設
1)飲料水
全国用水普及率 96%(1998年)、214リットル/日/人(貴州省134)
貴州省(1987年) 浅井戸62.9%、深井戸12.1%、河川水23.1%、湖沼1.5%
2)上水道
昆明市ではJAICA(国際協力事業団)のもと上水道整備事業(水路延長97km、そのうちトンネル部85km、予想供給量4.8億m3)が行われている。
興西湖(興義市)
2,500万m3のロックフィルダム、上水道3万m3/日、280リットル/日/人
興西湖のリン濃度(0.1mg/L)、クロロフィルμ5gがやや高い
天生橋ダム
日本の円借款(ODA開発途上国援助)1,200億円を受け、1998年に第1級ダム(340万kwh)、2級ダム(52.3億kwh)、総貯水量137億m3の多目的ダム。最大堰堤落差181m、提長470m、送電線は広州にまで延び、総延長は1,791km。完成後ダム建設地点の住民3万人が強制移住、一部の住民がダム湖で淡水魚の養殖事業を開始。
百花湖
貴陽市全体の10%の供給量、15ヶ所ある水源ダムのひとつ、1958年に築造された.
貯水量6,000万m3、最大水深22m、供給水量10,000m3/日
4.下水
1) トイレ
公衆トイレ 5.4基/万人
2)下水処理場
現在昆明市では、コークスガス製造工場の廃水処理事業、下水処理施設が4箇所(36.5万m3/日)、建設中が3箇所あり、完成すると市街地からの排水の80%が処理される。
貴陽市では、日本の環境省のもと、石炭脱硫を使った肥料工場での従業員住宅(1,400人)の生活廃水処理の富栄養化対策に日本のコンサル会社が取り組んでいる(アジア開発銀行)。
II.大気汚染
貴陽市 汚染度 96年: 2 00〜300ppm、2000年:97ppmに減少、目標50ppm
1.室内被爆
石炭71%、石油6.5%、天然ガス1.76%、水力20.4%
2.石炭火力発電所
SO2排出量150万〜160万トン、省全体の30%
製鉄所 SO2:11,000t/年、粉塵(FPM)、850t/年
3.自動車
昆明市では、1999年開催の世界花博覧会にあわせて、1998年8月1日に法律を改正、新車も中古車も排ガス規制対象、25万台のうち16万台適合。
III.ゴミ
1.家庭ゴミ
収集車毎日8時から10時、中間収集所へ
6元/家庭/月、3年間据え置き、将来値上げ予定
全国 有機ゴミ(40%) 炊事29.3%、紙7.8%、草木2.6%
無機ゴミ(60%) 灰48.2%、陶器4.5%、ガラス、2.8%金属1.8%
昆明市 ゴミ量1700トン/日、回収200トン/日、焼却していない。
水分量55〜60%、プラスチック4%、灰5%以下、紙10%以下
95年以降年平均8%増加、中間処理施設0.6kg/人排出量
貴陽市 800トン/日、総量1800万m3
生活ゴミ1998年1100t/day、2000年1190t/D、2008年1640t/D
2.埋め立て処分場
昆明市 埋め立て処分場(政府経営)2箇所、計画中900トン/日
貴陽市 灰分78.93%(95年80%以上)、含水率28.63%
東風鎮1980万m3、800t/day、使用年限31年、2000年から
白雲区 890万m3、600t/day、27年、2002年から
2.産業廃棄物
火力発電所の石炭灰埋め立て
3.リサイクル
再生紙2万トン、ビニール100トン/年、金属、ビン、缶類はほとんど回収
紙 市民より1.5角/kgで買う、製紙工場1元/kgで買い、1.8元で売る
横県 可回収9.1トン、紙、陶器、金属、ガラス
可堆肥51.8トン、灰、食品残物、紙、草木
可炎焼25.8トン、食品残物、紙、草木