「『先生』と呼ばないで」を読んで(2000年1月11日 朝日新聞)
私は大学の教員です。30年前に大学に勤めたときには、「先生」と呼ばれることに抵抗を感じていました。特に同僚からだけでなく、時には年長の人からも呼ばれます。最近、友人の大学教授が「先生」と呼ばないように回りの人たちに注意しているのを聞いて、初心を忘れてしまっていることを痛感していました。
教員も生徒や学生からは「先生」と呼ばれても、同僚や一般の人からは「先生」と呼ばれる立場ではありません。医師を患者が「先生」と呼ぶことをゆずっても、議員や弁護士、医師、教員が社会の中で「先生」と呼ばれることに対しては、おかしく感じるのは私だけではないでしょう。それだけでなく、「校長先生」や、「学長先生」、「議員先生」までが使われていることは、国語力だけではないように思う。このように書いてみると、議員に対して言う「先生」は、客が美容師などに対して言う「先生」と同様に不適切であろう。最も、最近の学生が自分たちのことを「生徒」と呼んでいることに対しても不思議なことでもあるが。
海部郡佐屋町
大学教員、八田耕吉(56)