台湾の環境紹介
基礎資料
正式名称は、「中華民国」、「台湾省(1999年7月に中国より一方的独立を宣言)」が使われている。
南北394km、東西144km、総面積36,190km2(九州よりやや小さい)。
人口約2,300万人、98%が漢民族(内省人84%、外省人14%)、先住民族2%。日本統治時代は高砂族と読んだタイヤル族(烏来)、低地のアミ族、最小人口400人のサオ族(日月潭)を始め12部族の約40万人。
言語は北京語が公用語・標準語として使われ、生活言語として台湾語(中国福建省の方言)、客家語(ハッカ、中国広東系の方言)各先住民族の言語など学校教育として見直されている。漢字は中国の簡体字と違い、日本の旧漢字に近い繁体字が使われる。
教育は国民小学6年,国民中学3年,高級中学か高級職業学校3年。日本と同様高級中学3年生までを義務教育。高等教育は複雑で5年制専科(国民中卒)、2年生と4年生の技術学院(高職高卒)、4年制大学と技術学院(高中高職卒)があり、更に教育学部は5年制、歯学部は6年制、医学部は7年制、小学校教師養成(師範学院)では4年制の後1年間の研修が義務である。男子は卒業後2年間徴兵制が施行、高等教育期間在学中は徴兵猶予される(社会奉仕などの代替兵役制度導入)。
宗教は、日本と同様に寛容であるが、信仰深い。主に漢民族の仏教と道教(寺廟)であるが、孔子を祭った儒教(孔子廟)の影響も大である。また、地方ではスペイン時代のカトリック(天主教)、オランダ時代のプロテスタント(基督教)などのキリスト教(教会)、日本時代の影響を受けた民間信仰の氏神様やイスラム教のモスクなど多彩である。
自然環境
大小79の島々(日本6,847)、中央山脈の西側には平地が広がり、東側には台湾全体の約55%占める山岳地帯が海岸線まで迫り、最高峰玉山(別名「新高山登れ」の阿里山)3,952mをはじめ、標高3,000m以上の山が133座もある。本島の3/4は100m以上の高度で、5%以上の勾配があり、本島の約半分は標高1,000m以上ある。
気候は亜熱帯モンスーン気候で、中央に北回帰線が横切っており、北側は亜熱帯、以南は熱帯に属している。
平均年間降水量:2,510mm 、山岳地域で3,000〜5,000mm。台湾東部の花蓮では、上流では年間降水量7,500〜8,000mm、河口の海岸部の平野部では200〜1,000mmと水資源の不均等分布を示している。台北盆地では地下水利用のため、地盤沈下が問題となり、1971年に規制をし、1976年以降安定化している。
降水量の殆どは、夏(6,7,8月)に台風とともにもたらし、最大1時間降水量748mmと、殆どが300mm以上である。最近100年間で350の台風、1,000以上の暴風雨があり、1996年7月31日には阿里山で、日降水量1,094mmの記録がある。その反面、台風のなかった1980年、1993年には600mmであった。
本島には129の河川があり、21の主要河川(本流)と29の中河川(支流)、79の小河川があり、流域面積が100平方キロある河川は9河川、100キロを越える河川は6河川しかない。
河川の勾配は上流で1/100の急勾配で、下流でも1/200〜1/500である。
地質は多くの砂岩と崩壊しやすい頁岩、泥岩で構成されており、簡単に泥流となる。それに加え、地震が多く、1999年9月21に発生したマグネチュ−ド7.6の台湾中部地震(集集大地震)は大きな被害をもたらしただけでなく、その後の大甲河水系や阿里山などの山岳道路の崩壊をもたらした。
生物相
維管束植物4,000種以上(日本8,800種)、鳥類400種(留鳥が約40%)以上(700種)、爬虫類92種(97種)、両生類30種(64種)、淡水魚140種(300種)、海水魚400種以上(3,100種)、哺乳類60種(241種)、昆虫類は推定50,000種(30,200種)生息している。
島の北部は、モンスーン、日本海流の温かい風が山脈により冷却され、亜熱帯の降水量が多く、島の固有種、亜種が多い。
中央山脈は冬季に雪が多く、2,000m以上の山系はタイワンクロクマなどの陸生哺乳類の宝庫である。始新世の粘板岩と石灰岩に、亜高山性針葉樹、温帯広葉樹、中標高での混交林とで構成され、樹齢3,000年を越すスギ、ヒノキなどの天然林が残っている。センザンコウ、サンモンキジ、サンケイ、チメドリなどの固有種に、台湾ニホンザル、イノシシ、シカ、キョンや高山性のイワヒバリなどとともに、多くの昆虫類、特に蝶類は186種(台湾全島380種、日本237種)が記録されている。
島の南端は、熱帯雨林と珊瑚岩で構成され、亜熱帯広葉樹林と東南アジア的な熱帯雨林の特徴を持っている。クロツラヘラサギ、アジサシなどの海鳥、アオウミガメ聖域が知られている。
総面積の約20%が自然保護地域に指定されており、7つの国立公園、19の自然保護区と6つの森林保護区、19の野生動物保護区、32の主要野生動物生息地がある。
2010年2月9日、嵐の後に倒れた政府の財産のブナの木を盗ったとされ、有罪になった先住民族の3人の男性に台湾高等裁判所は無罪を言い渡した。
環境問題
水質汚染
主要河川の汚染状況を行政院環境保護署は、1)未汚染(汚染指数2未満)、2)軽度汚染(2〜3)、3)中度汚染(3〜6)、4)厳重汚染(6以上)の4分類し、データを発表している。日本環境基準(生活環境の保全):AA〜E(PH,BOD,SS,DO、大腸菌群数)の6ランク。2001年の汚染状況は、未汚染61.7%、軽度9.8%、中度15.4%、厳重13.2%であった。日本環境基準達成率(BOD,COD):河川91,2%、湖沼55.6%、海域74.5%。
1980年代前半に「厳重汚染」が全体の5%前後であったのが、1980年代後半には12%前後に上昇し、2001年には13.1%と汚染のひどい河川が毎年0.5%づつ増えている。主要河川未汚染率が1983年には74.0%であったものが、1992年には61.4%と最低になったが、その後もほぼ回復傾向は見られない。
更に、重金属による汚染は世界最悪と思われ、全調査地域の5.7%の農地が、高濃度の重金属を含む深刻な汚染(グレード5)とされる。
台湾西部平野の最も汚染が激しい河川の二仁渓(エルジェン川)、塩水渓(イェンシュイ川)が流れる台湾の南西部の海岸線を走る省道(国道)17号線は「ガン(癌)・ハイウェー」と呼ばれ、ガン死亡率が全市町村の10%を占めている。
淡水河の河口には、高架の車道が走っており、高架下にはコンクリート壁があり、公園との間に遊歩道とサイクリング道路が整備されている。コンクリート壁の木戸を入ると、川岸に出ることが出来るが、2005年10月の訪問時には臭気がひどく、ヘドロにあふれる川であった。
2000年代には、市場の47%の魚から有機塩素系農薬が、牡蠣(カキ)中のTBT(トリブチルスズ)、底泥中のDEHP(ジ−エチル−ヘキシル−フタレート)などの汚染が見られた。
1980年代後半には、居住地からの強制的移住をさせられたタイヤル族の工場排水に汚染されたカドミウムによるイタイイタイ病の発生を始め、水銀汚染、PCP(ペンタクロロフェノール)などの公害問題も発生した。
2005年には「土壌及び地下水汚染整治法」が施工され、対象業種30業種、12,000社が対象となっている。
台湾の下水道普及率は所得水準に比べてきわめて低く(2000年の台湾一人当たり国民総所得14,214ドル、日本21,051ドル、韓国8,910ドル)、普及率が1989年3.0から2001年7.5%と殆ど上昇していない(日本70.5%、韓国68%)。台北市56%、高雄市17.2%などの都市部における下水道普及率は、地方に比して高い(ソウル100%、日本100万人以上98.4%、5万人未満41.2%)。
台湾には約650万頭の豚が飼育されており、豚の糞便による河川の汚染が問題となっているが、2010年7月には水質汚染費が徴収されるため、豚にトイレ訓練をすることにより排水汚染を減らす試みが報道された(2009年12月14日)。豚の糞便は真空装置を使って処理されたバイオガスと、処理後の廃棄物は肥料、魚やハトの飼料とされる。
大気汚染
総エネルギー消費量:石油46%(日本13%)、石炭36%(27%)、原子力9%(27%)、天然ガス7%(22%)、水力2%(11%)。
総エネルギー需要:産業42%(日本47.6%)、輸送33%(24.4%)、発電11%(日本民生28.0%)
台湾の行政院環境保護署(EPA)は、大気汚染指数(PSI)を0−50を「良好」、51−100を「普通」、101−200を「不良」、201−300で「非常不良」、300を超えると「有害」の5つに分類。日本環境基準:二酸化イオウ0.04ppm、一酸化炭素10ppm、浮遊粒子状物質0.10mg/m3、二酸化窒素0.04〜0.06ppm。
PSIが100以上の「不良」が、1984年から1991年の間は16%であったのが、1992年以降減少し、1995年以降5%前後で推移していたが、近年は3%にまで低下した。300を超える最悪のレベル「健康に有害」が、1980年代後半に1%だったのが、1992年以降皆無となった。
台湾の大気汚染の濃度が高かったのは、1984年から1991年で、EPAの発表している年平均数値が最高だったのは、1993年二酸化窒素0.031ppm、1985年浮遊粒子状物質96.6ミクログラム(一立方メートル当たり)、1989年二酸化硫黄0.028ppm、1991年一酸化炭素3.44ppmであった。日本環境基準達成率:一般環境大気(一般局)、自動車排出ガス測定局(自排局)とがあり、二酸化硫黄、一酸化炭素、二酸化窒素、浮遊粒子状物質は90%を越す達成率を示しているが、光化学オキシダントは0.2%と極めて低い。
台湾での自動二輪(バイク)の排気ガスはひどく、朝の通勤・通学ラッシュの交差点での発進時はまさにオートバイレースのようである。1,000人あたりのバイク保有率は560台(日本120台)と非常に多い。総浮遊粒子状物質が北京(中国)、バンコク(タイ国)についで多い。
高雄市は、2008年3月に新交通システム(地下鉄MRTの開業)を機に、すべての路線バスを国産バイオディーゼルに変え、ハイブリッドカー、LPG車、電動バイクを奨励。2009年より高雄市の公共施設に配置した公共自転車サービスが始まった(2009年2月のテスト期間中に利用した)。
クリーンエネルギーは190の風力発電施設(総発電量589,303MW)が設置され、太陽光発電も新たな「スター産業」へと成長している。台湾は国連に加盟していないため、「気候変動に関する国際条約」に直接参加できないが、2008年に環境保護署は「エネルギー政策ガイドライン」を発表。2025年時点の排出量を2000年の水準にまで下げ、2050年にはさらに半減させるとしている。
廃棄物処理
75ある廃棄物埋設処理場に加え、1996年には16のごみ焼却場が建設された。
1997年に一人当たりの平均ゴミ排出量が1,14キロの最高を記録したが、「国民ゴミゼロ」を目標に挙げ、2008年末には51%削減の0.52キロまで減量した。リサイクル率も10%以下だったのが42%になり、ペットボトルは開始後4年で90%に達した。
台湾の環境NGO
環境団体104の内、EPA(台湾環境保護庁)29、内務省登録75ある。
台湾緑の党、台湾環境アクションネットワーク、台湾環境保護連盟、台湾野鳥の会、国際台湾バードウォッチング協会、台湾環境保護ネットワーク、台湾生態学研究ネットワーク、台湾環境保護連合、荒野保護協会など。