東海地方主要河川における底生動物群集の遷移(第1報)
要約
1.1970年代の初めに今回調査したいずれの河川も水質汚濁が進み,特に中・下流域では死の川の状態を示していた.1975年頃より水質の浄化が進み,底生動物も増加してきた.しかし,1980年代になると富栄養化の波が上流域にまでおよび,個体数の増加および耐汚濁性種の出現が認められるようになった.特に最近では河川の富栄養化の影響を受けて,アミメカゲロウなどの大発生が東海地方でも報告されるようになってきている.
2.木曽川では上・中流域における有機汚濁が目立ち,耐汚濁性種の総個体数に対する割合(B/N)が30%と高く.特に中流域の美濃加茂市では85%と非常に高くなり,富栄養化による仰体数の増加が問題となる.
3.長良川および矢作川においては,土砂の堆積によって河床での底生動物の生息環境の悪化が仰体数の減少をもたらすといった新たな問題が生じている.
東海地方主要河川における底生動物群集の遷移(第2報)
―庄内川の底生動物―
要約
1.庄内川は、1970年代の前半に陶土の流入で無機汚濁が進み、河川水は常に白濁化していたため,水生昆虫の生息は殆どみられなかった.1980年代になると,各種規制の効果から無機汚濁は減少したが,有機汚濁が新たな問題となり,耐汚濁性種の割合が,26〜74%と高く,その個体数も非常に多くなっている.
2.アミメカゲロウの大発生は,家庭雑排水による富栄養化と川底への土砂の堆積,河床の安定,流量の安定や小雨などによる流水量の減少など生息に良い条件がそろった結果,この種
の特異性(短命,一斉羽化,交尾産卵習性)と重なり,発生の要因がととのったためと考えられる.
3.庄内川での底生動物群集の特徴は,葡萄型が約半分を占め,矢作川と同様にマダラカゲロウ類が多い.しかし,矢作川では種類数は多いが,庄内川では種類数は少なく,オオマダラカゲロウとクロマダラカゲロウが殆どである.よく似た生活型を示す長良川や揖斐川では祷翅目とヒラタカゲロウ類が多い.造網型は上流域で多いが,豊川と木曽川ではヒゲナガカワトピケラやシマトビケラ類と種類数も豊富であるのに対して,矢作川ではオオシマトビケラが多く,庄内川ではコガタシマトビケラが多いことが特徴である.
4.庄内川は,オオマダラカゲロウ,シロハラコカゲロウ,コガタシマトビケラなどの比較的有機汚濁に強い特定の種の個体数が多く,多様性が低く富栄養化が進んでいることをあらわしている.
5.庄内川の中流域で浮 型が多くなり、下流域になると都市汚染が他の河川の常として、生物が殆ど生息できない状態となっている