平成6年3月15日
山崎川における河川改修への提言
山崎川生態系調査検討委員会委員長 八田耕吉
多自然型、近自然型河川改修などいろいろいわれているが、実際に調査をやってみて、川は改修しない方が生物の生息環境が残されていると実感されたことと思う。コイの養殖は簡単であるが、コイだけが泳いでいる川を自然の川とはいわない。もちろん、コイだけが泳ぐ川を望んでいるのではないが、自然の川をつくることも当然できない。自然の川に近づいた、そして何十年か前の山崎川に生息していた生物達の住める川を再現し、
近づけることは可能かも知れない。そのために山崎川で具体的にできるいくつかの問題点をあげてみる。
第一に考えなければならないことは、都市河川において一番大きな欠点である水量の確保である。そのためには、
1.猫ケ洞池から矢田川に放流している溢流水を山崎川に流す。
2.夏季に猫ケ洞池から昼間行っている放水を、酸素不足になる可能性が高い夜間に行う。
これら基本的な問題の解消が前提である。
第二には、
1.水源である猫ケ洞池の水質改善(植物プランクトンの異常発生や富栄養化を止める)。
2.雨の時放流される下水の流入の解消。
3.河口部のヘドロの挨蝶など、水質条件の改善が必要である。
これらの要件の改良を前提として、河川の生態系の復元について生態学的なアプローチをすることは簡単である。川の蛇行、深浅、抽水植物などの植栽を連続させることが魚などの水生生物にとっては必要条件である。すなわち、水槽にコイを飼うがごとくアユやホタルを飼うのではなく、メダカやタナゴ、ドジョウやナマズが卵を生み、育ち一生をおくる環境をつくることが大切である。可和名橋から新瑞橋までの間ではウナギやマハゼが遡上しており、オイカワ、モツゴ、フナ、ドジョウなどの自然繁殖が確認されている。いろいろな生態系が連続しておれば、産卵場所、摂食場所、隠れ場所と移動が可能になり、自然に生態系も安定してくる。ただし、自然は極相に達するまでは安定した状態では維持されないので、最も良い生物群集ができるように手を加えてやる必要がある。このことは、多自然型河川改修にとっても大変大切なことであるが、逆に生態系を埋解しておればつくり出すことはごく簡単です。
この調査も放流魚の選定から行われてきたが、前項で述べたとおり小さな生物に捕食者としてのコイやフナの数の制限など、コントロールが必要である。また、餌としての小さな生物の住める瀬や淵、水生植物の植栽など多様な環境づくりを考えるべきである。 土砂の流入が少ないと思われるので、なるべく凹凸のある変化のある流れが望ましい。特に、川岸や川底が平坦にならないように、ブロックなどの構築物を使ってでも隠れ場所をつくることが生物の生息できる条件である。
最後に、大きなコイが泳いでいるのは非常に目立つが、背びれが出ているような状態では異常である。まして、それを子供が網で追いかけているのは見る人に不決感を与えるが、川でザリガニやメダカをとっている子供を見ることはホッと心がなごむのではないだろうか。そんな大人が抱く子供の頃の郷愁を、この山崎川の改修計画に取り込んでいくことを望んでいる。