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短歌集 bQ


















    岩なれど
      円かここちの
         目をやらば
     苔むす蒼の
           育むと観ゆ










秋風や
  束ねし髪を
    ほどきては
  長く伸びたる
    影まで 揺るる
冷たさの
   裏腹にある 
       おもいやり 
  決して持たせぬ
        過剰の期待
片隅に
   静かに咲きし
        花の名を
    尋ねし人の
         幾たりあらむ
まちぼうけ
  落ちては消える
          雪眺め 
   四時間待った
           18の我
やさしさは
   溢れることの
       をかしけれ
 空のグラスは
       静かに 居たり
あまりにも
     静かな湖面
  いたずらに
    石 ふたつみつ
        投げてもみたり
おもいきり
   弱音を はいて
           みたくって
 でっかい海を
      探して 歩く
ボタンかけ
   手こずる人の
         かなしくて
  いずれ 我もと
         笑みて こたえし
月あかり
   蒼く静かに 
        さしこみて
 もうここまで と
          本を閉じ置く
拭えない
    ビン底につく
          ひとしずく
陽に かざしても
        逆さにしても
プライドの
   高きゆえなら
       手にとりて
  我が事の ごと
       思いやるらむ
何気なき
   一言にさえ
      舞い上がる
   少女の如き
       我やおかしき
この年に
  なりて身につく
         隠し技
   右目で笑ひ
       左目で泣く
満月の
    蒼く静かに輝きて
  灯りともさず
      ただ居る窓辺
一風に
   さざなみの如
      ざわめきて
  嬉しくもあり
       哀しくもあり
笑ひたる人の
     見もせぬ昼の月
  その美しさ
       誰が ほめるや
雲なくば
   絵にする術の
        なき月の
 周りに添いし
      星々もまた
ほんとうに
   伝えたいのは
        ひとつだけ
  けっして言えない
           たった一言
ささやかな
   雨風にさえ
      揺さぶらる
せんかたもなき
      まつかぜの花
風に聞き
    雲に尋ねし 
       雪心
  降るや降らずや
         空は冬色
もしもまた
  生まれ変わると
      ゆうのなら
   あなたの好きな
        花になりたい
うつつよに
  咲きたる花の
        儚さや
    無償の愛の
      枯れることなし
吾が小舟
   つなぎ止めむと
        杭を打つ
  流れに入りて
     また 杭を打つ
ゆきどまり
   壁の向かふの
        空を見る
    翼があれば
      飛びこせらるを
かなしきは
      始まる前に
          をわること
  見果てぬ夢に
         かかる雨あり
戻らぬは
  掌の盃より
      落つる水
   満たぬと知りつ
       くみたる刹那
もふ少し
   勇気があれば
 もふ少し
    違った色をば
       選びて塗るに
ぬれそぼつ
   花の色香や 
      しめやかに
  眺む人にぞ
     かおりたつなり
地にいでて
    時を うつろひ
         地に還る
   路傍の花に
      風 戯むれむ
一人道 
   遠き灯りを
     眺むれば
 浮き世の 風も
       冷たからずや
かえるらば
   こしかたいつも
      旅の空
  流れる雲に
    やまぬ あこがれ
空の下 
   風にいだかれ
       ひとあそび
  時は静かに
      流れてゆけり
陽に笑みて
   風に戯れ
      雨に濡れ
 時に 咲き散る 
       唯 花たらむ
こんこんと
  湧きたる清水
     汲みたれど
 相掌の盃
     溜むるを 知らず
あなたから
   幸せそうだ と言われて
       私の影は 
          小さく 揺れた
楽しげに
  話すことほど
      哀しけり
  ほんに憂き世の
    こと裏表
背伸びして
  手をのばしても
       とどかない
 欲っしてやまぬ
    満天の星
雨音の
    隙間に響く
       蛙声
  笑っているのか
     ないているのか
探せども
    闇夜に カラス
         見えもせで
  月の満つるを
       指折り数ふ
散るらばや       
   風に誘われ
           花のまま
思ひ残さず     
     川面に消えむ 
おへばなほ
   遠く離れし
       逃げ水に
  ただただこがれ
     またおひてゆく
月光の
     明きとばかり
          浮かれしは
   蒼きひかりの
        あるやも忘る
返すもの
  何もなき身の
     せつなさや
言ひたきことの
       ひとつも 言えで
陽だまりに
   浅き夢みし
        寒桜
     咲きあふるるも
         春には あらず  
追いかけて
   くれぬと知りつ
        待ち焦がれ
     月を 見上げる
       飛べないカラス
 ぽっかりと
    あいてしまった
            風穴は
  何を つめても
         吹き飛ばされる
あたりまえ・・・
  30分の1の
   また 4分の1は
        ほとんど 0  
銀杏に
  月と焼酎
      寒桜
   地雷ばかりが
      あちこち残る



雨風に
  早々と散る花 あらば
    ただ どこまでも
      臆病になる


スタートに
   なくちゃならない
          need me
 踏む出す勇気
        駆け出す力
風あらば
    流れのままに
           一遊び
   空に 昇るも
    地に 舞ひ落つも



              H17・2・25











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