平 成 十 五 年 一月 |
洗 い 髪 風 に 流るる 遠花火 |
遠 花 火 |
外灯に 鳴く蝉ありき 雨上がり |
で こ 三つ 地図に被りて 海指しぬ |
繁し 葉 の 陽 を はね笑う 山の道 |
蓮の葉に 一滴転げ 晴れ渡る |
夜桜の 灯下に 蒼く 寄り添えり |
階段を 駆け上る先 春日向 |
どの屋根も 白きに見えて 蝉時雨 |
貝狩りの 小さき貝の 鳴くバケツ |
一刻を 惜しみて 蝉の 雨に鳴く |
砂の城 一波をして 泡と消ゆ |
朝寝する 子の顔円か 夏休み |
稲光 添い寝する子の 目を覆い |
洗い髪 風に流るる 遠花火 |
言の葉に 抑えし心 笹飾り |
風に聴く 遠き太鼓の 音哀し |
走馬灯 忘れ得ぬ日の 戻らぬや |
川風に 浴衣の裾の 遊ばるる |
暗夜行 蛍火ひとつ 先行かむ |
秋風や かたずかぬ事 多すぎて |
月明かり 今だ悲しき 夢に起き |
星月夜 光を描く 色を得ず |
落つ蝉を 揺さぶる風の 黄昏む |
媚びること 嫌ふ遠目の 夏の猫 |
風鈴の 音無き夜に 諍いす |
故郷の 嫁ぎて思ふ 梨の花 |
心地よき 風を絵にせむ 秋の日に |
栞とす 落ち葉一葉 過ぎし恋 |
忘れ得ぬ 約束ありき 秋の風 |
包まれど あまりに遠き 月明かり |
木枯らしの 窓打つ音を 数えおり |
庭の実に 紅さす朝や 鳥の声 |
ときめきの 薄れて秋の 更けゆかむ |
何とのう 生くるは難し 昼の月 |
夜ごと鳴く鳥を尋ねし 十三夜 |
日の香よき 蒲団はおりて 長き夜 |
秋風や 仕草のうつる 二人ぎり |
静けさに 独り言する 雪の朝 |
風に知る 伊吹の山に 降れる雪 |
雪を待つ おのれがおかし 四十前 |
木枯らしや 眠れぬ夜の 痛み哉 |
雪を待つ 君や 幾度も 空眺む |
言わずとも 皆が寄り来る 炬燵哉 |
新 た陽の 昇るを胸に 又一歩 |
一年の 吾が身を 撫でし 大晦日 |
大島を 鴨居に解けり 除夜の鐘 |
夢にまで いでてつきさす 冬の雨 |
落つる雪 仰ぎて 頬の 紅まりぬ |
手渡しし人の ぬくもり とどまりぬ |
陽だまりを 選びて 夢の 続き哉 |
君が手の つめたさ 胸に ささりおり |
手袋を はずして 触れる 薄氷 |
ひとときに 雪の寒さも 忘れおり |
雪や降る ただ君が 声聞きたけり |
海に舞う 雪や 吾が身と 思えたり |
別ウインドウで見ていただいています。
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別ウインドウで見ていただいています