昼下がりの……。
「まだだ……」
あらぬところにその整った鋭角な鼻梁うずめ、低い声が静かに命じる。
離れていても鼓膜と胸を直接震わせる声音に、たまらなくなり強く眼をつむり、食いしばった。
熱い吐息がこもった隅所で、柔らかな唇と舌が動いたことで、それでも押し寄せた波は止められなかった。
一瞬の殺しきれなかった嬌声と沈黙。
「……まだだといったろ?」
早くて悪かったなっ。荒い呼吸をおさめるのに必死で、文句の一つも言い返せない。
「こんなに早くイクようじゃ、女なんか到底満足させられねぇぞ」
喉の奥で嗤うような独特の口調に、定まらなかった思考が一気に覚醒する。
「おまえなぁっ 仮にもしてる最中に、付き合ってる相手に、他の相手とやること前提の話をする!?」
カチンと来たときには、呆気にとられる相手の、はだけただけの襟元を両腕で掴みかかっていた。
さっきまで力の入らなかった身体が嘘のような反応。
自分でも、正面から相手の見開かれた眼を見たら、思わぬ自分の行動にバツが悪くなってきた。
決まり悪く手を放し、それでもいたたまれず心持ち身を離す。
「あんたにいってもまたガキっていわれるかもしれないけどっ、オレが誰と寝ても平気みたいなこと、少なくともこうしている間ぐらいうなよなっ」
どうしてそんな、いつか別れるのが当然みたいなこといえるんだよ……。
いつまでも、こんな関係続かないと思ってるの? おいらとあんたの間で、こんなこというおいらの方が、馬鹿げているとあんたは思うかもしれないけれど……。
それでも、語気が荒くなるのを止められない。
こんな口調で彼に対して話したことなかったから、驚いた顔してる。
可愛くないと思われたかな……。うっとおしいヤツだとか。
奇怪なものを見たような表情でこちらを見ている視線が突き刺さる。
おいらが怒鳴るのそんなにおかしいかよ……。
「ふっ……」
突然笑い出した相手に、今度はこちらがあっけにとられた。
数秒前の相手の写しのように。
「先輩?」
思わず問いかけ声が、外でのものとなる。
「かっわいーーっ」
そういって、また腹を抱えて笑い始める。
いつまでも笑っている相手に、だんだん馬鹿にされている気がして、剥きになった自分が恥ずかしくなってくる。
「わらうなーっっ」
といって、笑うの止めるような殊勝なひとじゃないけどさ。
むかつくなぁ。でも、なかなか見られない心底楽しそうな笑顔に、つい見惚れてしまう。
「えっ……?」
ぼけっと見とれているうちに、気がつけばぼふっと背中に衝撃が走る。
いつの間にか、柔らかい寝台に縫い止められていた。
慌てて身を捩ろうとするが、捕まれた手首はビクともしない。
「あっ あんたねぁー! 話聞いてる!?」
まだわらいに震えているシャツごしの逞しい肩を押し返すが、相手はますます楽しげに、項に唇を寄せてくる。
「さて」
「なに?」
「もう黙ってろ」
「っ」
いきなり変じゃない!? 真顔だよ。この人。
でもこの顔には弱い……。怖くても、鼓動が跳ね上がるの押さえられない。
おとなしくなると、口元を吊り上げた。獲物を前にしたケモノみたいに……。
どう思ったかは、コワクテキケナイ
デモ不安ニナル必要モ、ナイカモシレナイ
連続、イタダキモノ。
これまたDQ4(ピサ勇)ver.アリ
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