第11話 県大会2度目の決勝戦

 この時の記憶は殆どない。何故なんだろう。私の担任の学年でなかったためか、優勝戦のスコアの差も忘れてしまっている。やはり接戦ではなかった。ただ記憶に残っているのは二人の選手のことだけである。高蔵に進学したK子、名女商に送ったM子のことである。
私は顔に似ず至って神経質で特待で入学した子が卒業するまで心配でたまらなかった。だから根気に高校まで出かけ元気でいるか確かめたものでした。
 ある日K子の父親が血相変えて我が家へ来られた。「娘が体調が悪く部を休んで寝ていたら、マネージャーから電話ですぐ出てこいと言ってきた。こんな馬鹿なことがあるか・・・・」。加えていろいろ厳しい部活の様子を縷々語り憤慨しておられた。ともあれ宥めて帰ってもらう。あらためて高校に行き監督とよく話し合う。結局K子は肩に先天的な欠陥があることが判明し中途で退部した。
 一方名女商へ行ったM子は170cmの長身で余り能力は高くなかったが、高校の誘いに簡単に入学を決めた。部員が数人の時代であった。部の激しさと自分の将来看護学校進学の希望との狭間で苦しんだよう。1年の途中で退部を言い出した。部員不足で試合ができないので大会終了後退部した。
私は特待生については最初に退部のおりの学校側の対応を確認することにしていた。ある高校の水泳部は退部即退学と聞いていたから。そんなことになったら大変。結局二人は無事卒業。10年間で退部した特待生はこの二人だけだった。
 このチームも東海大会に出たはず。会場すら記憶に残っていない。嫌な想いは忘却しやすいものか。