第14話  消え行く栄光
  いつの頃だったか記憶がないがこんな強烈な映像が残っている。それは名門守山中学のことである。井上監督が名短に行き後の監督もまた井上と言う同姓の方だった。テレビの民間放送で「今夏の守山を破るのはどこでしょう?」と尋ね、各地の有力校の監督がブラン管に登場しコメントしていた。何事かと思っていたら守山中バスケ部のドキュメンタリーが作成されるらしいとの噂を聞いた。
県大会当日守山のベンチにテレビカメラが入っているではないか。噂は本当らしい。試合の場面、タイムの場面、そして敗れて嗚咽しているのを冷酷にカメラが追っていた。なんて無情なのかと腹が立った。
  後日テレビで放映された。題名は忘れたが日本一のチームが敗れ去る姿をテーマーにしたものだった。戦力が落ち優勝戦線に残れないことを知っていて、あえてドキュメンタリーを作ったのだ。放送局はなんて下劣かと憤慨したのは私だけではなかっただろう。
 この時の若き監督井上君はこのあと交通事故かなにかで急逝したと聞く。