第21話 親子2代 師匠その3

  我が家の座敷にケヤキの根っこを切断して作った重い座敷机がある。私が定年退職したばかりのある日、かって高蔵高校に進学した伊藤百合さん(第19話 待ち望んだ長身者)親子が突然訪れた。「先生運んで」との挨拶。外に出てみると凄い座敷机、3人掛かりで部屋に運ぶ。私が送った11名の子たちが退職記念に贈ってくれたのだ。勿論重田恒文監督の配慮は言うまでもない。机の裏には監督初め全員の名が立派な書体で黒々と書かれている。
  私が母屋を新築したのも、この重厚な座敷机にふさわしい部屋を作りたかったから。離れを以前作ってくれた教え子に母屋も建ててもらった。玄関に教え子の棟梁がこれまたケヤキの豪華な衝立てを贈ってくれた。我が家の自慢はこの2点だけ。
  重田監督にはどれだけ世話になったかも知れない。先生とのなれそめは今昔物語にすでに記載しました。私の栄光のごときものは先生なくしては存在しなかったはず。その意味でありがたい師匠である。あの東海大会で足を痛めた選手のテーピングをしていただいた想い出、県大会優勝戦で絶対絶命の危機を、先生の助言で切り抜けたこと。10年間に受けた恩恵は数え切れない。
  その上私がS中を去ってしばらくすると息子が奇しくも同じ中学のバスケ部監督になり、足繁く高蔵高校に通い始めた。そして郡市、尾西での優勝を重ねた。親子2代の師匠重田先生は私ども親子の恩人です。私がS中を去って24年にもなるが、いまだにお中元、お歳暮が届くのは恐縮の至りです。