第29話 渡辺将人君 42年卒


 ハイジャンプの選手。色白で長身。2年生で150cm位の記録であった。3年生になったある日、170cmを偶然跳んだ。私の身長をゆうゆう越えてのジャンプである。心底驚いて感激し褒め称えた。そのころ私は胃をすっかり悪くして毎日の指導は苦しかった。時には草の上に寝てコーチした。
 自分では跳べないので、部員の記録向上には率直に喜びを表現した。その当時の郡市の優勝は155前後だった。新記録は160だった。
 さて大会当日k中のグランドで将人はただ1人160を越えていた。165も難なく跳び新記録。会場の全ての競技は一時中止で選手、関係者、応援の人たちも鳴りを潜めて注目。170,175成功、大記録だ。満場の視線と賞賛を浴びつつ、フィールド審判長をしていてそばに付き添っていた私は、生涯忘れられない幸福感に満たされていた。
 勢いにのって直ぐ180に挑戦させた。これは残念ながら失敗だった。私たちは県大会優勝と全国1位をねらってみた。全国1位は178ぐらい。ところが県で175で第3位。1位2位の選手は全国でも1位、2位、結局将人は全国第4位となった。(彼だけはさみ跳び)
彼と共に中部日本の特別強化合宿に(岐阜)参加、他校の優れた指導者と寝食をともにし、いろいろ語り合ったことは今も楽しい思い出として鮮明である。
 100mを走ったら全く平凡な彼が、よくも大記録を出したものだと今だに不思議だ。(この記録以来17年間破られなかった)「後記:全く素人の私、そして特別の運動能力の所有者でなかった将人、どうしてあの飛び方で大記録を出せたのか分からない。子供には凄い可能性が隠れているものだとつくずく思う。」