21年目の町内会代表 〜近況報告2024春〜
運よく能登半島地震のような災害にも見舞われず、時には躓きながらも、この3月末日に町内会代表の役を無事終えた。今回は21年ぶりなので、昔の出納簿の自分の筆跡を見ても前回のことはよく思い出せない。町内会は戸建てが19戸4班に分かれ、他に2つのマンション46戸と4事業所で計69戸の構成だ。町内会の規約も総会もなく、ほぼ慣例と口伝により運営されている。代表の役は、町内では「嘱託」と呼ばれる。昭和の時代に市が各町に「嘱託員」を設置したときの名残のようだが、今や町内会は市の出先機関ではなく、任意加入の自治会になっている。
前任者からの引き継ぎは事務的なもので、保存資料は雑多、特別な申し送り事項はなし。私は誕生以来ずっと町内に居住しながら、端っこに位置することもあり、現在の戸建ての古い住民の名前や顔さえよく知らない。引継資料には各戸の代表者名しかなく、その人数や家族構成は不明で、必要に応じて班長から聴取することになる。
年度初めに4班長と顔合わせをしたら、幸い最近の嘱託経験者2名が含まれており、その意見を参考にして年度内にすべき点を確認した。まずは、破れたごみネットの更新と、耐用年数をはるかに超えた消火器の更新。ネットは近隣の町内の現物を見て複数の店で探したが、望ましい網目や色合いのものが見つからない。清掃事務所に問い合わせたら市が貸し出すことがわかって落着した。ネットを収める箱も、大きさと見栄えの適当なものが難しい。消火器は市内のホームセンターで調達でき、旧製品は引き取ってくれた。
町内会費の集金、地域諸団体の総会出席、各種会費・負担金の支払いが5月に終わり、少し落ち着いた。ごみ収集日は簡単ではない、分別が不適切なため「警告」が貼られた未収集物がよく発生した。「プラスティック製容器包装」の日だ。調べると、プラの表示のないもの、食べ残し、ガラスの小瓶まで入っていたりする。持ち重みのするものは怪しい。在住していない店舗の従業員や新入居者に多そうだ。
町内には氏神神社があり、晩秋から早春にかけて山の講、元旦祭、初午と3回の祭事を町民が集まって催す。この祭事の手配も嘱託の主要な仕事だ。毎年繰り返しているので班長の手助けにより、まずは大過なく過ぎていく。もう1つの行事は、10月初めに津島神社の秋祭りに子供獅子が参加し、氏神神社がその拠点になる。コロナ禍により本年度は久しぶりの開催となった。資料不足のため、過去の出納簿や領収書に頼って準備した。私の小学生時代は同級生だけで町内に8名もいたが、今は担い手が極端に少ない。4年ぶりだし、親類の子の飛び入り参加があり、参加者数の予測も簡単ではない。津島神社まで幼児を含めて13名の子供獅子を引率した。数種の子供向け飲料を用意したが、アレルギーで乳飲料はNG、甘いものはNGという声に対応しきれなかった。
神社の清掃、草取りの従来の方式は@不定期に全戸で一斉にA毎月班ごとに全戸でBシルバー人材センターに委託C除草剤使用D嘱託と近隣の有志が実施、いずれも一長一短ありだ。Aの班ごとでも日程調整や飲料の準備が手間なので本年度はDを選択し、妻が引き受けた。何度か班長を務めて町内に顔が広い妻は、ごみ集積場の管理や各祭事の準備にも力を尽くし、毎月の書類回覧や金銭管理を含め、嘱託業務の大半を支えてくれた。
2月に入り、引き継ぎ準備のため保存資料を再点検した。玉石混交、新旧混在の資料が分散保存されていて、新たな嘱託が一読して全体像を理解するには不適切だ。資料を取捨選択し、なんとか現状をわかりやすく次に伝えようと作業を始めた。
・消火器管理…14年前に市から譲渡され、耐用年数8年が経過するまで管理が義務付けられた所定の台帳がまだ引き継がれていたので、更新を機に廃棄した。
・防犯灯管理…8年前の配置図はあるが、その後の増減やLED化が記録されていないので現場を調査した。電気料金の領収書と見比べると、廃止後も契約の変更がなく過払いの疑いがある。料金の安いLEDの台数も実態より少なそうだ。確認するため中部電力津島営業所へ出向いたら建物に営業所の看板はなく、受付窓口は無人で、営業ではなく送配電を担う中部電力ハイブリッドの、用件を選ぶタブレット端末だけが待っていた。分社化に伴って営業所が撤廃されたのだ。
やむなく自宅から電話で中部電力ミライズに問い合わせると、青森のカスタマーセンターにつながった。やや複雑な用件だったこともあり、何度も中断して要領を得ない。回答がまとまったら電話で返答するようお願いしたら、担当部署から丁寧な回答がいただけ、LED化も契約に反映されていないことが判明した。皆様の中電はお客様から遠のいているが、合理化が電気料金の安定に不可欠であれば悪くは言えない。念のため、携わった電気工事業者にも確認したうえ、台数は1台減、LED化は2台増の契約変更をした。電気代を年間5千円ほど引き下げたことになる。過去の過払いの返還手続きができないのは残念だ。
・申し送り資料の整備…従来の資料を一新し、会員名簿、嘱託業務の概要、年間日程、引継物品リスト、直近の祭事の記録、消火器・防犯灯設置状況、歴代嘱託名簿、収支報告書などを1冊にまとめて見やすくした。嘱託が順送り制なので、今後の若い世代の担当者にも役立つと密かに期待している。順送り制は弱点もあるが、町内会活動や地域活動への理解と関心が深まるのが良い。町内会に関する市の相談窓口、市民協働課にも疑問点を度々確認した。昔と違って応対が驚くほど柔軟で、回覧板の更新時も口頭だけで受け取れた。
町内の葬儀日程は報告を受けて直ちに会員に周知し、嘱託が参列する慣例だったが、本年度の3件は日程周知を避ける家族葬ばかりで、周知や参列は不要だった。新しい慣例になりそうだ。上記のように、町内のつながりの希薄化、学童の少子化や飲料嗜好の多様化、町内会員の高齢化や独居化、中部電力の分社化の実情、市の相談窓口の柔軟な対応ぶりにも直面した。1年間の嘱託業務を通じて得た最大のものは、時代と世の中の激変を体感できたことかもしれない。80歳を超えた高齢者にとって刺激となる貴重な機会であった。
2024.3.31