結婚披露宴でのスピーチ(3)
私が本日お招きいただいた理由をご本人からお聞きしましたら、「最も長い期間(約2年半)一緒だった直属長」ということでありました。つまり私には平成5年からの勤務ぶりの証言を求められたものと思います。そのため私はキ−ワ−ドを用意しましたが、そのうち、誠実、繊細(気配り) については先ほどの真鍋常務などのお言葉とまったく同じであります。当時の私たちの仕事では、文章を書く部分が重要でありました。文章は葉書ほどのものでも人の男女別、年齢層、書き手の性格までも現れやすいものですが、丹波君の文章は、筋が通ったうえ単語や語尾などにも十分な配慮の跡が感じられるものでした。
次に、これまでお話に出なかった面をお話しします。一つは人の話をよく聞いて自分を高めようとする向上心、何からも学ぼうとする姿勢であります。世の中には他人の言葉に耳を傾けず自分の考えたとおりに突き進んで成功する天才肌の人もいますが、私自身、丹波君と同じタイプであり、多くの人にとって望ましい姿勢だと思っております。もう一つは感性(文化・芸術的センス) が新しいという点で、私の部下(仲間)20人ほどのなかで際立っていたということです。当時パソコンが新たに導入されたとき、ペイントブラシという絵を描くソフトを使い、丹波君がお魚を見事な配色で描いたことを今でも覚えております。また、自分でアレンジしたディスクジョッキ−が放送されたと言ってテ−プを貸していただいたことがありましたが、なかなかのものでした。
私は直接的な仕事の指導は十分できませんので、他の面で皆が働きやすいように気を配りました。静岡へ出張したときには、駅構内の店「大作」で、丹波君と新鮮なお魚をつまみに酒を酌み交わしたこともありました。お聞きしますと「大作」は新婦のご親類にあたるそうで、不思議なご縁だと思っております。また、私と今日ご列席の清水さんとは、当時部内の皆さんとともに、年1回(後には3回ほど) ワインの試飲会を催していました。まだ今のようにワインブ−ムになる前であり、ちょうど「赤ワインが健康に良い」という研究成果が新聞に初めて発表された頃でしたが、若い人もワインになじんでおくといいと思って皆さんに勧めたわけです。当日は丹波君と終業前からクラブハウスに行って、一緒に栓を抜いたり準備をしておりました。常務の目を盗んで行きましたが、今おかげで少しは役立っていると思いますのでお許しください。
せっかくの機会ですので、はなむけの言葉をひとこと申しあげます。私はちょうど結婚30年になりましたが、その経験から「違いを楽しむ」ということをお話しします。私が結婚して新婚旅行から帰った翌朝から、作ってくれる食事は驚きの連続でした。私はそれまでおふくろの味に慣れていましたので、みそ汁だけでも具の選び方、切り方、大きさ、味の濃さなどみな違っていて、「へえ−、そんなのありか……」と思いました。しかし、「それでもいいか」と思い直して見ているうちにおもしろくなり、だんだん新しい文化が家庭に定着していきました。本日の披露宴も、和装のお二人に中華料理を前にしてシャンパンで乾杯するなどと、世界の文化から良い点を吸収、総合されていて、意義深く思います。お二人は出会ってからこれまで、お互いの共通点を探すようにされたかと思いますが、これからは住所も名字も同じになりますので、むしろ毎日自分との違いを発見する楽しみを味わっていただきたいと思います。
とりとめのない話になってしまいましたが、これをもちまして、お祝いの言葉とさせていただきます。どうもありがとうございました。