ワインカーヴ巡り
ぶどう畑、ワインの醸造所(ワイナリ−)、ワインの貯蔵庫(カ−ヴ)、ワイン博物館など、
いつも好んで飲んでいるワインの生まれ故郷を自分の目で確かめたかったので、フリ−タイムを作って見てまわりました。
その後、1995年産のブルゴ−ニュワインは、特別の思いで味わっています。
・ディジョン〜ボーヌ (フランス) 1995.9.20 |
・ロワールのワインカーヴ (フランス) 1999.10.17 |
・ワインサファリ・ツア−(ボーヌ北) (フランス) 1995.9.20 |
・オルヴィエートのエノテカ (イタリア) 1996.9.18 |
・ワインサファリ・ツア−(ボーヌ南) (フランス) 1995.9.20 |
・ボーヌのワイン博物館 (フランス)1995.9.20 |
ディジョン〜ボーヌ(フランス:ブルゴーニュ地方) 1995.9.20
小雨の中を駅まで急ぐ。7:45発のバスに乗り込み、最前列に座る。女性運転手だから、ということではない。一人26.3フラン
(580円)で切符を買う。後から乗り込む人を見ていると、切符に打刻機で時刻を打ち込むシステムのようで、とまどっていたら、運転手さんが切符に「20.9.95 7h45」と書き込んでくれた。女性運転手はいい。乗客がみな「ボジュ−(おはよう)」と挨拶するところが、名古屋とちがう。時刻表のとおりに発車した。天気は悪いが、わくわくする。途中で降りる人は、「オ−ヴォワ(さよなら)」と必ず運転手さんに声をかけていく。こちらの人は、フ−ドつきのアノラックを愛用し、少々のことでは傘を使わない。しばらくしてブドウ園が両側に見えた。赤ワインのラベルでおなじみの「FIXAN
(フィサン)」の標識がある。このあたりからブルゴーニュのワイン街道を走ることになる。バスはN74を走り抜けるが、本当のワイン街道は、西を平行して走るD122の細道で、ジュヴレイ・シャンベルタン村などがある。この街道がN74と合流するのがクロ・ド・ヴジョ村だ。車窓から畑の中のシャト−を撮影していたら、隣のおばあさんが、「あれが有名なクロ・ド・ヴジョのシャト−なのよ」というようなことを親切に教えてくれたので、私は「あ−、そう」と、大きくうなずいた。つづいて幻の「ロマネ・コンテ」を産するボ−ヌ・ロマネ村やニュイ・サンジョルジュ村を通り過ぎる。この地域はコ−ト・ド・ニュイといって、ブルゴーニュ地方のなかでも最高級の赤ワインができるところだ。高級な畑は石垣で囲ってあり(クロという) 、しゃれた門までつくってある。沿道に石垣がつづく。雨も降りつづく。ディジョンから45km、1時間ほどで終点ボ−ヌへついた。この町は人口2万人。
ワインサファリ・ツア−(ボーヌ北)(フランス:ブルゴーニュ地方) 1995.9.20
まずは観光案内所を訪ねる。ガイドブックで紹介されていた「サファリ・ツア−」の掲示と仏語・英語のパンフレットを見つけた。副題は、直訳すれば「バッカス・ワイン・ツア−……ブルゴーニュと恋に落ちる最上の道」。1日に4回、3コ−スある。いずれも2時間で、カ−ブ
(ワイン貯蔵庫)での試飲つきだ。@
9:30 発 「ぶどう園とシャト−巡り」 一人170フラン(3700円)A12:00 発、14:30 発
B17:00 発 貴族のツア−「グラン・クリュ・サファリ」
(最高級シャト−巡り)二人で申し込むと少し割り引いてくれるのが、フランスらしい。コ−スはそれぞれに魅力的で、とにかく一番早い9:30発
「ぶどう園とシャト−巡り」に申し込んだ。手続きを終え、指示どおりに待っていると、9:45になり、30代で普段着の純朴そうな男性が近づいてきてミニバスへ案内してくれた。この人が運転手兼ガイドで、ブルノ−さんだ。お客はどうやら私たち二人だけだった。つまり貸し切りで、私たちのお抱え運転手さんともいえる。ビデオ撮影などに無理が利き、好都合だ。ただし、言葉が通じればの話しだが……。わからないなりに、説明は英語でお願いした。地図で、走るコ−スの説明を受け、さあスタ−トだ。このコ−スは、ボ−ヌ以北を巡る。路線バスで通った国道をすこし戻り、東のわき道へ入る。国道から見るのとは違い、ブドウの木が手にとるように身近になる。たまらず下車した。見まわすと360度、緑のブドウの木の列が整然と並ぶ。ふと静岡の茶畑の風景が浮かぶ。日本で見るブドウ園の、頭上から房がいっぱい垂れ下がる光景とは、だいぶ違う。木の背丈が私よりもはるかに低い。太い幹は60〜70pで、そこから枝が伸びている。列の側面の枝は機械で刈り込まれていて、1本当たりの枝葉は少なく、ブドウの房数も極端に少なくしてある。すべてエキスの濃いブドウを作るためだ。品種はブルゴーニュ赤ワインの代表的なピノ・ノワ−ルで、青紫色をしていて中粒だ。葉の緑とブドウの色の対比がみごとで、畑にはいり何度も撮影した。今夏の猛暑で今年はいいワインができそうだ、とガイドさんはいう。このところ天気が悪く収穫がやや遅れていたが、明日が組合の決める解禁日とのことだ。収穫の様子が見られないのは残念だが、絵葉書から想像することにしよう。まずまず、いい時期に訪れてよかった。石ころ混じりの軟らかい土が、雨に濡れて靴底にべったりとついたが、足どり軽く車に戻った。
ブドウ園のなかに小さな村が点在する、というか、小さな村の周囲にブドウ園が広がっているのだが、その一つの村
(ラドワ村か) のシャト−に立ち寄り外観を眺める。古そうだ。次のアロ−ス・コルトン村にある「シャト−・ド・コルトン・アンドレ」というシャト−は美しい城館だ。レモン色を地色にした屋根の幾何学的な模様が特徴的だ。ウィーンの聖シュテファン寺院の屋根の絵柄とも類似している。この地もハプスブルク家の支配下にあったことの証しかもしれない。中庭で撮影をしていたら農作業の大きな車が帰ってきた。後で知ったことだが、ここは高品質のワインを産することで名高いネゴシアン(仲買業者)で、自社畑も持つピエ−ル・アンドレ社の本拠地だ。キリン・シ−グラム社が日本へ紹介している。細い坂道を上り、丘陵を走る。舗装のない凸凹道を揺れながら、水を跳ねながら行くのがサファリらしい。村を見おろす眺めがいい。日展などで、ブルゴーニュの村を描いた絵を何度か見たことがある。ひなびて、自然に溶け込み、全体として味わいがあり、絵筆を取りたくなるものがあるのだろう。今は小雨に煙っているが、朝日や夕日の頃に、このあたりをウオ−キングできたら……と想いを馳せてみる。ガイドさんは、わき見運転をしながら説明するのでヒヤヒヤする。その心配からか、ガイドさんの言葉がなかなか理解できない。途中、白ブドウのシャルドネ種の木があり、黄緑色の房を垂らしている。シャルドネはブルゴーニュ白ワインの主力品種だ。許可をえて一粒つまんでみた。白ワインのような酸味が少なく、意外なほど甘かった。だから、熟成が進んでアルコ−ル分が多くなり、コクのある、しっかりとした味わいのワインができるのだ。太く短い幹が苔むしている畑もある。まろやかな高級ワインになりそうだ。眺めのいいところで思いのままに下車し、
サヴィニイ・レ・ボ−ヌ村の醸造所 Domaine SERRIGNY へついた。ガイドさんが、持っていた鍵で門を開ける。室内でブドウ圧搾機、ブドウ液の熟成槽、コルク栓の挿入機などを指さしながら、ワイン造りの説明をしてくれた。全体にこじんまりして、醸造所というより作業室といった感じだ。ガイドさんは、これが typical
(典型的)だという。ボルド−地方とちがってブルゴーニュ地方では、このような小規模の醸造所が多いようだ。薄暗い地下室に入る。ワインの樽が部屋いっぱいに積まれ、その隙間を通る。本場のワイン樽にかこまれて、胸がときめく。つづいて瓶詰ワインが並ぶ別の地下室で、待望のワインの試飲だ。赤白どっちが好きかときかれ「どれも好きだけど、赤がいい」と答えた。まず白でアリゴテ種とシャルドネ種の2種がでた。ソムリエのまねをして、ちゃんと色を確かめ、香りをかいでから、口いっぱいで味わった。ともにフル−ティだが、やはりシャルドネがいい。赤は90年産と91年産。仏ワインのラベルに表示される原産地名は @地域 A地区 B村 Cブドウ園 と区域限定が狭くなるほど高級になるのだが、2種類とも村名とブドウ園名が表示されている1級だ。味の差はよくわからないが、高級ワイン特有のコクがあった。すきっ腹にきき、チ−ズがほしくなる。ガイドさんも同じ量を飲んでいる。こちらの人はアルコ−ルに強いとはいえ、飲酒運転に緊張しつつボ−ヌへ戻った。2時間のエキサイティングなサファリ・ツア−は終わり、チップを気前よく渡した。
ワインサファリ・ツア−(ボーヌ南)(フランス:ブルゴーニュ地方) 1995.9.20
15:00 発
「コ−ト・ド・ボ−ヌ地域とオ−・コ−ト・ド・ボ−ヌ地域」のツア−客は6名だった。60歳台のドイツ人らしい二人づれ男性と、同年輩の一人の米国人男性、30歳台にみえるカナダ人女性と一緒になる。ガイドさんは午前と同じ人だ。私たちは後部座席にすわる。説明は英語だが、カナダ人女性は両国語を話せるので、彼女が質問するときは仏語のやりとりとなる。はじめにポマ−ル村のブドウ園に立ち寄り、ピノ・ノワ−ル種のブドウを摘むことができた。赤ワインの渋さがなく、とても甘い。皮をむいて食べているから当たり前のことだが……。これで思い残すことはない。ポマ−ル村とヴォルネ−村の境界に立った。『ブルゴーニュの黄金の丘で』の著者は、ヴォルネ−村の農家に1年間滞在し、ワイン造りを取材したのだ。かなり良い赤ワインができるとのこと。良質の白ワインで有名なムルソ−村を通り抜けて、ポマ−ル村ちかくに戻り、醸造所 DOMAINE MAZILLY で見学と試飲をする。DOMAINE は栽培兼醸造者の意味で、MAZILLY は人名だ。午前の醸造所よりは大きく、瓶で熟成させる部屋もある。試飲室にはコンク−ルでの表彰状や記念品がならぶ。白のムルソ−から飲む。おいしいに決まっている。1本80フラン
(1800円) で値もいい、赤は @オ−・コ−ト・ド・ボ−ヌ (34フラン=700円) Aモンテリエ(52フラン=1100円) Bポマ−ル1級 (92フラン=2000円) の3種だ。最後のは1994年産で香りもコクも強すぎるくらいだが、さすがにいい。2本衝動買いした。二人づれの男性と女性は、立ち飲みから椅子にかけ、声高に絶えず何かをしゃべっている。私たちがスナップ写真をとろうとすると、奇声をあげて冷やかす。来訪者の寄せ書きのある用紙が壁にはってあったので、「至福、おいしかった」と書き加えてサインをした。米国人男性はイリノイ州からやってきたという。中国人(台湾人)の文字と私の字をくらべて、違いがわからないといった。ひらがなの有無を見きわめるのもむつかしいようだ。カナダ人女性は、マルセ−ユからきて、日本語も「少しだけ」話せるという。どんな職業の人なのだろう。17時すぎにボ−ヌへ戻った。18:02 発ディジョン行きのバスに乗ればいい。まだ1時間ちかくあり、小さい町だからと油断してノ−トルダム教会のあたりをうろうろしていたら、バス停までの道がわからなくなってしまった。通りがかりのおじいさんに尋ねると、ボ−ヌは終点であり、降車場と乗車場が離れているそうだ。バス停へ行く曲がり角まで一緒に案内しようといってくださった。歩きながら老人は、「オスピスを見たかい?」「ワインの試飲はしたかい?」と話しかけてきた。「オスピスは見たし、サファリ・ツア−へ2回参加した」と答えたら、満足そうに大きくうなずいて「楽しめたかい?」といった。別れるとき、曲がる方向を何度も指さし、見送ってくださって、親切が身にしみた。熟成したブルゴーニュ・ワインのように、いい味わいだった。
広い街道へでて、バス停が見つかった。そこで少し待ち、念のため妻がベンチに座っていたおばさんに「ディジョン行きは、ここでいいですか」と確かめたら、「ディジョン行きのバス停はもう少し前方ですよ」との答えだった。バスの来る方向を見ながら、あわてて移動する。バス停についたらディジョン行きのバスが来た。滑り込みセ−フ。乗り遅れると1時間後になり、夕食に間にあわず、添乗員さんに心配をかけるところだった。ディジョンに近づく頃には暗くなっていた。
ロワールのワインカーヴ(フランス) 1999.10.17
15:20 レストラン
"LA CAVE"(ラ・カ−ヴ) の女主人から聞いたとおり上流へ 300mほど歩くと、目指すワインカ−ヴの標識が見えた。 ENGLISH SPOKEN CAVE MARTIN Christian と書いてある。中庭へ入ったが、農機具があるだけで人けがない。家の戸を開けて声をかけると50歳前後の主人が出てきた。指さされる戸を開くと、暗く細い横穴だった。後ろで戸を閉めて押し込められたら……という一瞬の心配より興味の深さが上回った。弱い裸電球の明かりだけをたよりに進む。左右の壁面にくりぬかれた空間にワインのボトルが次々と、まとまって眠っている。前方に人の顔が浮かんだ。主人が別の入り口から横穴に入って先回りをしていたのだ。だんだん明るくなり、試飲用に用意されたボトルが見えた。ラベルがなく手書きの紙が貼られているものも多い。'97の辛口、'92のやや甘口などモンルイ村の白ワイン Montlouis を試した。フル−ティで複雑な味わいがする。好みが分かれるかもしれない。「タクシ−を待たせているのか」と主人に尋ねられたので「ノン」と答えたら、さらに奥の細道へ導かれた。再び暗闇を進む。いきなり目の前に古びた黒っぽいワイン樽が現れた。やがて階段を上がると、白いいすの並びが明かりに照らし出された。テ−ブルもあり、集団の試飲ができる部屋なのだ。「先日、日本の新潟からのグル−プが訪れたが、新潟に近いのか」と尋ねられ、「日本のほぼ中央に住んでおり、新潟は遠くない」とグロ−バルでアバウトな答えをした。持参の本『フランス ロワ−ル古城めぐり』12頁に掲載されたラ・カ−ヴなどの写真を見せたら、ニコッとして何度もうなずいた。蟻の巣のような横穴探検は、貴重なわくわく体験だった。ラ・カ−ヴへの戻り道に協同組合のワインカ−ヴが見えたので、これも入ってみた。横穴は太く、ボトルの本数が多く、整然と保管されている。規模は大きいが、その分おもしろさに欠けた。
オルヴィエートのエノテカ(イタリア) 1996.9.18
オルヴィエ−トは良質な白ワインでも有名だ。エノテカ
ANTINA TIPICA FORESI で、 Orvieto Classico(オルヴィエ−ト・クラッシコ) を試す。さわやかで、フル−ティで気に入った。たまたま休憩していた他のツア−の女性ガイドさんに「この店の地下にあるワイン蔵を見ていくといいですよ」と教えられ、潜ってみた。薄暗い階段を下りると、灰色のカビがまとわりついた山積みのワイン樽や横穴に寝かされたボトルがあり、ワイン好きにはたまらない。この地下室は、古代ロ−マより前にこの町をつくったエトルリア人のものだというから、紀元前のものなのだ。ちなみにエトルリアは、トスカ−ナ地方を中心とする12都市の連合国家で、山上都市が多いのは防衛上の理由のほか、洪水、渓谷内の湿地から発生するマラリアを避けたためといわれる。11:30 飲料水などはどうしたのだろうと心配しながら山を下った。
ボーヌのワイン博物館 (フランス:ブルゴーニュ地方)1995.9.20
12:30
「ブルゴーニュのワイン博物館」へ入る。2階建てで、ブルゴーニュ公の邸宅を利用しているそうだ。受付で日本人かときかれ、日本語のパンフレットを渡された。1階にはブドウ園での作業やワイン造りの様子が、道具の実物とともにリアルに展示されている。2階にはタスト・ヴァン(利き酒用の銀製の小皿)の数々、ワイン樽の製造過程、ブルゴーニュ・ワインの特徴である、なで肩の瓶に至るまでの瓶の形の変遷、かつてのワイングラスなど、貴重な展示に興味が尽きない。別館のブドウの巨大な圧搾機6、7台のコレクションは圧巻だ。大勢の人力で柱のような棒を押したりロ−プを引く様子が想像できる。ワインへの思い入れが深くなっていく。サイトマップ