ホップ、ステップの菜園生活 〜近況報告 2025秋〜

 

 

 

 

 苗屋さんで目が合った。ホップという苗の名札だ。「ぐんぐん成長するのでグリーンカーテンに最適!実はてんぷらで召しあがれ」とある。ホップは「ビールの魂」といわれる苦みの素だが、この温暖の地で、猛暑の夏を乗り越えて実りの秋を迎えられるのだろうか?以前に見た、東北・岩手の遠野で高い脚立に乗ってホップを収穫しているテレビ映像が浮かび、迷ったすえ2株を入手し、新たにチャレンジすることにした。ここで売っているということは、この地でも育つということだ。グリーンカーテンなら庭でネットに這わせて育てればよい。これまでもゴーヤ、インゲン豆、オカワカメを育てた要領で、高さの問題は解決しそうだ。

 

 418日、大きめの鉢2つに植え付けた。つる性で細くて頼りなさそうな苗だが、実はともかく花だけでも見たい。6月には1日数cmの勢いで、つるが伸びだした。実はつるの上部に付くため、ネットの下段から横に這わせて折り返すことにする。毎朝、上に伸びたつるを無理やり横に誘引するのが日課となった。いじりすぎて先端を枯らしたこともある。7月後半につぼみらしい小さな塊を妻が発見した。月末に撮影し拡大して見ると開花していた。わずか1pほどで薄緑色なので、気づくのが遅れた。8月下旬には松かさの形をした可愛らしい実(毬花)に育った。30個以上はありそうだ。

 

 早速、味わう。まずは「追いホップ」から。ジョッキにビールを注ぎ、泡の上にホップを載せて眺めた。実をかじると、一瞬の間を置いて苦みが口に広がったが、ビールを口に含むと苦みが急に薄れ、心地よい苦みと旨みが感じられた。ホップをかじって水を含んでも嫌な苦みが口に残るのに、水より苦いビールを口に含むと嫌な苦みが消え失せるとは……。ホップの実の苦みが、ビールに含むホップの成分と見事に溶け合ったのだ。アサヒドライはキリンラガーに味変した。キリンラガーは更に旨みが増した。おすすめの天ぷらも試す。揚げると苦みが薄まり、フキノトウなど春の山菜のように苦みが楽しめた。もちろんビールにピッタリだ。今夏は観測史上最も暑かったが、それによく耐えて結実してくれた。最近キリンビールは、地球温暖化に対応するため、30℃の高温状況でも生育不良がなく品質を低下させずに栽培できる方法の開発に成功したという。ホップの栽培地が徐々に南下しそうだ。

 

 菜園の今年のニューフェース一番人気はスイートパレルモ。パプリカの仲間だ。これもたまたま苗屋さんで見つけ、珍しい品種なので試しに1本育ててみるかという気軽なきっかけだった。7月には縦長の大型で緑色の実が、込み合うようにぶら下がった。長いのは20pほどもある。それが黄色に色づいてから収穫し、試食してみた。皮が薄めなので普通のパプリカより柔らかな歯ごたえで、程よい甘さもある。早めに収穫したものは酸味がわずかに残り、甘さとのバランスが良い。生食にぴったりだ。フルーツのような食感さえする。種は付け根の近くに少しあるだけなので、輪切りにして食べやすい優れものだ。欧州では人気の品種のようで、赤色もある。

 

 ほかに浜クロッピーという名の黒ピーマンも初めて育てた。食感はやや固めだが甘味は強い。小さなうちから黒色で、早く収穫できる。そのまま放置すると茶色、赤色に変色し、甘みが増す。従来から育てている白ピーマンや赤いミニパプリカなどと皿に盛り合わせると卓上が華やかになり、味わいの違いも楽しめた。

 

 新しい品種に出会うと菜園生活が日々新たになる。ホップやスイートパレルモでも、どんな大きさになるのか、いつ頃どんな花が咲き、実をつけるか。それがどんな形や色なのか。いつ収穫すべきか。どんな味わいなのか。どんな利用法があるのか。数々の疑問と好奇心が次々と芽生えてきた。どんなに失敗しようが、それまでのワクワク感がたまらない。うまくいけば達成感と自己満足に浸れる。

 

 今年1月に4度目の脊椎管狭窄症による腰痛に悩まされたり、6月の定期健診では肺がん疑惑の再検査を受けたりしたが、今のところは大丈夫だ。農業は脳業とかいわれ、体力維持だけでなく認知症予防にもきっと役立つと信じている。ホップ、ステップばかりを繰り返し、ジャンプまでには至らずとも、菜園生活をまだしばらくは続けてみたい。

 

 2025.10.19

 

(エッセイ風) 菜園のニューフェースたち

 

 

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