津島市蛭間町
tel.0567-25-3272
全席禁煙に致しましたので、
 喫煙はデッキ席のみとさせていただきます。
 毎木曜日第2,第4水曜日を定休日とさせていただきます*
 2004.04.06

 普段お花に興味も縁もない人でも、桜は特別?それともお花見口実の宴会目あて?とにかく日本全国お花見ムードのこの季節。確かに木や枝やその姿をじっくり見ていると、毎年毎年よくこれだけの花をつけられるなあって、本当に感心するっていうか、やはり見入ってしまう。


 桜の名所数々あれど、わざわざ見に行くということは、今までもさほどなくて、掲示板に書いたとおりどこがどうなんて、ほとんど知らない私達。CATのますたぁおすすめの五条川もすごくステキそうなんで今度は是非!


 それで今回知らないなりにもどこに行くかって、いろいろ迷った結果、マスターが雑誌で見た「車窓から見る桜の美しさ・・・名松線」というのに心惹かれてしまい行き先はそこに決まり。生憎の雨の中、予定通り早起きして朝家を出た。何せ本数の少ないその名松線。9:00台に乗るのは到底無理と、11:00台を目指して車を走らせる。


 なんとか松阪駅に着いたのが、11:00ちょっと過ぎ。どうやら15分の発車らしい。それから、駐車場がどこにあるのか聞いて、なんやかやで発車1分前。名松線の出るホーム”5番線はどこですか?”と、駅員さんにたずねると、”もう出るので早くしてください”と。用をすませ戻ったマスターを早く早くと促がして、思いっきり走って何とか間に合った、というより間に合わせた。


 こういう時って、この間の笑える話じゃないけど、人から見るとギャハハって大笑いするような光景なんだけど、私達はこれのがしたら、2時間待ちっていうのがあるからとにかく必死。無事?列車に乗り込むと、目指すは終点「伊勢奥津」片道1時間ちょっとの列車の旅だ。本に書いてあった通り左側の席に座り「車窓から見る桜」と同時に短い列車の旅を楽しむ。


 終点に到着し列車を降りたらまず帰りの時間を確認。15:15と17:13このどちらかで。その間この近くで桜をということになるのだが、駅前のバス停で時刻表を見ていたら、見知らぬおじさん曰く”「三多気の桜」と言う有名な桜があるがそこの桜祭りというのが来週で、その時にはバスも増発されるんだが・・・”1週間ちがいで平常通り、次のバスまでにかなり時間がある。


 その「三多気の桜」とやら、バスで10分程と聞いて、歩けない距離じゃないと歩き始めた私達にそのおじさんは”ヒッチハイクで行きなはれ”と、関西弁でアドバイス。愛想笑いでその人たちとは別れたが、ヒッチハイクなんて無理だよと思った。仕方なく雨の中を歩き出した私達。駅弁だのビールだの買い込んで列車に乗り込むつもりだったのが、あのドタバタで何も買えずに飛び乗ったので、駅に着いたら今度こそと期待超特大だった。ところが駅には自販機が1台あるのみ(実はこれさえも帰ってきてから気づいたのだった)何も食べずに行って向こうにも何もなかったら、そのまま松阪に帰るしかないの?なんだか暗い気持ちになってしまい雨の中とぼとぼ歩いていたら、めずらしく歩いてすれちがう御夫婦らしきおふたりに出会い聞いてみると、その桜まで行くには1時間くらいかかるということだ。まあそれくらいどうってことない。それより問題は何か食べるところがあるかどうかだ。するとご主人がおだんごくらいしか食べさせてくれるところがないとおっしゃる。でもこうなったらおだんごだろうが何だろうが、ないよりいい、私の頭の中はおだんご一色になっていた。なんかちょっとうれしくなって、また歩く。


 しばらく行くとマスターが目ざとく酒屋を見つけた。看板もなく一見ふつうのお家に見えるんだけど、何か匂うのか”うん?ここは酒屋か?”私もいっしょにガラス戸越しに中をのぞいて見ると確かにお酒の一升瓶やビールが並んでいる。戸を開けると奥から品のいいお上さんが出てきてくれて、マスターは名松線に飛び乗ってから今までをいちいち説明している。あいづちを打ちながら話を聞いていたお上さんは”何にもありませんなあ”と言いつつ、ここの下に喫茶店があると教えてくれて、”やったあ”と私は心の中でそう叫び、小躍りしていた。そしてこの時おだんごのことはすっかり私の頭から消えていた。


 ところが、教えてもらった通り行くと確かに店はあるもののどうやら休みらしい。大喜びしたのも束の間”え〜〜っ、休みー?”さすがにショックだった。また歩くしかないの、もうダメ!私は道路をはさんで向こう側にあるその店には行く気にもなれず、そこに突っ立ったまま。だけどマスターは、その店の隣にあるスタンドに入っていってなにやら聞いているようだった。


 するとスタンドの中からおじさんが出てきて、喫茶店の中に入っていく。どういうこと?私が不思議に思っていると、スタンドからマスターが何やら私を呼んでいるようだった。その喫茶店はそのおじさんの奥様がやっていらっしゃるらしく、何か食べさせてもらえるということだった。折角のお休みなのに悪いなあと思いつつ、お言葉に甘えることにして、店の中に入れてもらう。


 雨が降っていて寒いし、お腹はすくしで、意気消沈していた私達は、あったかい店内に入り、お腹いっぱいごはんを食べて今度はしあわせいっぱいになっていた。”助かりました、生き返りました”、おじさんとママさんに何度もお礼を言って、田舎の人ってやさしいんだなあ、親切だなあと、しみじみ感じていると、おじさんが今から灯油を届ける家があるので、三多気の桜まで車に乗せてってくれるというのだ。それっていくらなんでもむしが良すぎると思ったが、どうせそっちの方向だからと言ってくださって、またお世話になることに。


 お店でごはんができるまで、おじさんは自分の趣味の写真のこと、三多気の桜のこと、などなどいろいろ話してくれて、車で進んでいくとその時見せてもらったパンフレットの通りの景色が目の前に現れた。”わぁ〜っ”おもわず声を上げた私。道の脇には古い民家があって古木の桜とそれは見事にマッチして風情があってためいきものだった。


 なんでもおじさんの話によると、来週の桜まつりには人が多すぎて、この情緒たっぷりの道を思うように歩けないほどになるらしい。それでは、風情も情緒もあったもんじゃない。臨時バスもなくてちょっと大変な目にあったけど、桜まつり当日じゃなくてよかったと内心私は思った。


 そのあたりで車から降ろしてもらい、のんびり歩く。桜を見ながらしばらく行くと、道から少し坂を降りた民家の軒先に焚き火をしているおばちゃん4人。ここでは話に花が咲いていた。楽しそうだなあと、足を止めて見ていたら、おいでおいでと手招きしている。それでもどうしようと迷っていたら、”あたっていき!お茶飲んでいき!”と明るい声。降りていくと寒いからここに座ってと、焚き火のまん前の自分達のイスをあけてくれて、すると今度は、いろいろあるけど、お茶なら軽いからと”お茶買ってって”と、ちゃんと営業も忘れない。バスに乗り遅れるといけないからと、ほんのわずかな時間だけ、あったか〜い焚き火とおばちゃんたちとの会話にほっとして、今度はバス停を目指す。


 やっとのおもいでバス停に着いたら、只今の時刻2:59p.m.30分ほど前にバスは出ていて、次はなんと6:00過ぎまでない。おいおい、なさすぎだろうよ、いくらなんでも。ということは、奥津駅まで歩くしかないのだ。そうなれば当然15:15の松阪行きは間に合うはずもなく、”次は5時なんだからゆっくり行こう”と、私達はまた歩く。のんびりゆっくり歩いて駅に向かった。


 松阪で必死の思いで列車に飛び乗った時、”ああ、これじゃあ先がおもいやられるわ”と、ちょっとうんざりだったけど、奥津と三多気のあったかい人たちと出会って心の中まで桜満開、いい気分、短い短い素敵な旅だった。


 今週は「I Can't Believe That You're In Love With Me」
ART PEPPER 「Intensity」 大好きなレコード!
          「・・・the way it was!」

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