道草撮影5周年−その舞台裏

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サツマイモ

イネ

ニラ

キモクレン

ツリバナマユミ

 


 「トップページの写真を毎週更新」とホームページで宣言したのは、愛知万博があった2005年初めである。この年に会社生活をリタイヤするので暇はできるが、季節感があって絵になる植物写真のネタは年中あるのか……。悩みながらも、とにかく昨年末で5年つづけ、各季節を5巡した。枚数にして約260枚。主だった写真を見直しやすいように、植物名を季節ごとに野草、ハーブ、野菜、庭木、芽、実に区分けし、50音順の一覧表にした。この道草撮影(索引)は5年間にわたる草木との出会いの集積であり、私の新たな友人たちの顔ぶれである。これを眺めながら、道草撮影の舞台裏を記すことにする。

 

どこで、いつ撮るのか。初期には、わが家と妻の実家の庭と菜園がベースであったが、やがてウオーキングの道すがらや、サイクリングでの物色も加わった。四季を通じて車で月2、3回通うのは、稲沢市にある植木畑だ。苗木の種類が数多く、人通りは少なく、背の届く低木がいくつもあり、格好の撮影地である。春にはウグイスやキジの声も聞こえる楽園で、素材の少ない冬でも何か発見がある。ところが残念なことに、植木ゆえに突然移植されて、撮ろうとした木が姿を消したり、近年の不況により伐採されて荒地に変わる畑も少なくない。撮るカメラは2006年からデジタル一眼レフ+マクロレンズ(接写用)+三脚。晴れた日は色彩が鮮やかに映るし、逆光の美しさも引き出せる。だが、白や黄色の花を撮るときは明るすぎるので、うす曇か早朝がいい。早朝は光と影の加減がよく、舞台でスポットライトを浴びたように何でもきれいに見える。そのうえ、通常は風がないので絶好の撮影タイムだ。接写のため少しの風でも画面がぶれるので、風があるときは、止む瞬間までじっと待つしかない。早朝に夢中で花を撮影しているうち、他のつぼみが開いてくるのに気づくこともある。

 

画面の構成では、被写体を生かすも殺すもバック次第なので、背景に気を遣う。色や形が地味な野草などはなおさらである。青空や暗い木陰を背景にするのが無難であるが、自然は思うようにならない。その場合は、小さめの絞りで背景をぼかすのだが、やりすぎると肝心の被写体のピントが甘くなってぼけたりする。そのため、絞りを変えながら何枚も撮っておく。シンプルな背景がいいといっても、被写体以外の花やつぼみが背景にぼんやり映っているほうが、奥行きや雰囲気のある良い写真になることもあるので悩ましい。

 

撮影するということは、何かを四角い枠により切り取る作業であり、同時に不要部分を切り捨てる作業でもあるが、撮影された写真から枠によってさらに不要部分をそぎ落とすのがトリミングである。撮ったアングルは変えられないが、切り取り方によって迫力が増したり、わかりやすくなったりする。インパクトを求めてクローズアップをしすぎると場の雰囲気を失うことがあり、これまた悩ましくも楽しい作業である。野草など名前を知らずに撮った写真は、あとで名前を追究する。妻に尋ねたり本でも調べるが、ネットのサイトが便利で早い。たくさんあるなかで野草一覧草木365は、月別に写真が並べられていて重宝している。名前さえ見つかれば、あとは検索により命名の由来など素性が詳しくわかり、すぐに親友になれる。とはいえ、まだまだ匿名の写真も少なくない。

 

道草撮影は、どうしても盗撮が多くなるので不審がられる。ふつうは無関心でいてくれるが、アキノノゲシのときなど、興味深そうに近寄り「何を撮っている?」「そんなもん撮ってどうするの?」と、さりげなく牽制球が投げられることもある。ハナマメのとき、畑にいるおばさんに「撮らせていただいていいですか」と尋ねたら「こんな格好だから……」と勘違いされたこともあった。最大の失態は、タイサンボクのとき、花に触れたら折れてしまったこと。無人の畑で誰にお詫びしてよいかわからず、今なお、その白無垢の遺影を見るたびに心を痛めている。

 

私はいつも、次週掲載予定の写真をパソコンの壁紙に取り入れて眺めている。同じように時々お気に入り写真を壁紙にしていただける方々もいる。ほかにはSDカードにコピーしてテレビ画面でも見られるようにしてある。横長で大きく輝きのある映像は、モデルが一番魅力的になる。画面は小さくなるが、主要な写真を携帯電話に入れ、いつでも話題にできるようにしている。もちろん待ち受け画面は、季節のお気に入り写真。お誕生日などのお祝いメールに、相手に好まれそうな花を添えることもある。花束よりお手軽だが、いつまでも残る良さがある。

 

2007年から、前半・後半の終了後に、自選お気に入り各12枚の組写真を作成し、掲載している。原則は月順に並べるが、色や大きさなどを考慮して配置換えもする。そのなかから、さらにお好みベスト3の選定を身近な人たちにお願いしている。お好みだから選考基準はまったくのフリー。結果は、それぞれの思い入れや美意識などが異なるため結構ばらつく。誰か1人にでもトップに選ばれたものは幸せ者だが、誰からもトップには選ばれないが、多くの人の2、3位に入るものもトップに劣らない。いずれにせよ、このとき客観的な評価の目を自覚できる。5年間を通じた私のお好みベスト5を決めるのは身内だけに難しいが、冒頭の5枚をあえて選んだ。写真としては、ハスやツバキなど色鮮やかで、誰が見ても華やかなものも好きだが、今回は控えた。上位2枚については、サツマイモの花は貴重で、実物を見たことがある人は極めて稀であり、イネの花は9月の10時〜12時にしか見られず、残暑のなかで汗まみれになって撮ったことによる。

 

毎年ネタは限界かといいながら、そのつど新顔も出現してきた。満開の花だけではなく、その時季ならではの新芽、つぼみ、木の実、枯葉などの美しさもある。植物園や旅に出てネタを広げることもまだできる。自然の写真は一期一会でもあるので同じ条件で撮り直すことはできないが、一眼レフ以前に撮ったものもリフォームしたい。ということで、もう少し道草をして迷いながら歩いてみようと思う。

 

   2010.2.10

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