菜園の優れものフェンネル
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鱗茎 |
つぼみ |
花 |
フェンネルに出会ったのは、ローマの青空市場だった。巨大な玉葱のような姿をしていて、株元は色白で、繊細な緑の葉との対比が美しい。どうやって食べるのか、どんな味がするのか……。いま「フェンネル」と聞いてイメージが湧く人はそう多くない。近くのスーパーでは見かけないからだ。菜園では10年ほど前から、ネットで入手した種を蒔いて育てている。食べれば甘苦い味わいが非凡で、クセになる。その体験から、栽培法にも利用法にも多くの利点がある優れものだと実感している。
フェンネルの栽培でも、子育てのように初期には手がかかる。種は8月中旬から時期をずらしてポットに蒔くが、まだ暑い盛りで水やりが欠かせない。無造作に水をかけると種が流されたり、出かけた芽を傷めることになる。発芽で全滅したこともあった。10日ほどして発芽するが、芽は細長くひょろひょろで倒れやすい。本葉が出て菜園に移植してからも、暑さや台風の風雨に負けて命を落とすことがよくある。10月に入れば根付き、もう大丈夫、一人ですくすく育つ。
11月には間引きしながら茎フェンネルとして食べはじめる。株元(鱗茎)が瑞々しいのは12月の収穫までだが、3月まではいつでも食べられる。これまで鱗茎が大きくなるにつれて土寄せは必要だが、直根性なので水やりや追肥は不要なのが助かる。3月後半になると鱗茎の間から脇芽が出るが、その地中にある脇芽が柔らかで貴重な珍味だ。3月末に1株だけ残しておくと、4月からは若葉が収穫できる。6、7月には背丈ほどに伸び、つぼみが食べられる。黄色い小さな花は皿の飾りになる食用花だ。同じセリ科でも、セリや人参の白より見栄えがする。秋にもフェンネルシードが採れる。フェンネルは病虫害に強いほうだが、アゲハチョウには好まれる。うっかりすると大きな幼虫がいくつも住みつき、葉をせっせとかじっている。アゲハチョウはミツバや柑橘類を好むグルメで、その点からもフェンネルの魅力がうかがえる。
間引きの茎フェンネルは、全体が柔らかいので輪切りでシャキシャキとした食感を楽しむ。この頃は葉も柔らかい。成育した鱗茎は内部ほど柔らかいので、内部はサラダなど生食に、外部は加熱用に向く。外部はローストや鉄板焼きにして粒マスタードを付けて食べるのがお手軽だ。細切りにして炒めると甘みがよけい味わえる。パスタに入れれば高級感が増す。一番外側はスープに入れると甘く上品な香りが漂う。どの部分でも、高齢の私の推しは天ぷら(フリッター)で、甘みや香りやほのかな苦みが生きる。ネットで学んで根の部分も揚げると、ほんのり甘く、また別の味が楽しめた。今季初めて試みたのは、葉柄の皮をピーラーで除いた部分で、かじってみたら柔らかく甘くてジューシーで大ヒット、これぞフェンネルの味。ただし、寒冷期前の12月まで限定の楽しみだ。
4月に入ると鱗茎が硬くなり、スープ以外は食べにくい。この時期にはふわふわの若葉を採り、サラダに加えたり、パスタのトッピングに使う。焼き魚やカルパッチョにも加えると、「魚のハーブ」といわれるように、甘くさわやかな香りが魚の味を引き立ててくれる。葉はバジルに代えてジェノベーゼ・ソースにしてパスタに絡めることができる。葉を他のハーブと合わせてハーブティーに利用すると、ティーの味わいがまろやかになる。6月に出はじめるつぼみがまた甘苦く柔らかくて、見た目にも可愛い。しかも、脇枝のためだんだん小さくなるものの、2か月近く次々と出てくる。つぼみが食用になることは、淡路島のイタリア料理店の放映で知った。フェンネルシード(種)は、ピクルスや魚料理の風味づけに活用できる。
フェンネルを差し上げてみると、好きな方にとっては病みつきになる食材のようだ。だが、誰もに好まれる味ではない。わが家ではお手軽レシピしかないが、ネットでは数々のもっと美味しそうなメニューがいっぱい並ぶ。美味しさを知って食べる人が増えれば、増産は難しくない。さらに愛好者が広まるようにと、顔色をうかがいながら皆さんに菜園の余りものを配っている。フェンネルは@病虫害に強く、さほどの手間がかからず育つことA茎、葉柄、鱗茎、根、葉、つぼみ、花、種と、全身が多様な用途で食用になることB年間を通じて食べられる期間が長いこと、栽培者にとって本当に優れものだといえる。
2026.2.25
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