「危険な暑さ」と菜園生活 〜近況報告 2018晩秋〜


食用ホオズキ

サンマルツァーノ

ウコン

 

 

 今年の夏は、いつになく暑かった。40.3℃を最高に38℃以上が12日もあり、猛暑、酷暑を超えた「(命にかかわる)危険な暑さ」という聞きなれない言葉が連発された。そう言われては外出がままならない。早朝のゴールデンタイム(5時〜7時)は菜園で小手先の作業をするが、あとは終日エアコン漬けの毎日だ。重なる睡眠不足と運動不足によって身体がシャキッとしない。暑さ凌ぎと暇つぶしのため、気軽に本を読むことにした。「告白」で著名な湊かなえのミステリー数冊は充分楽しめた。シリアスなものでは、悲惨な日本兵の実態を明らかにした「日本軍兵士」、中国からの苦難に満ちた引き揚げの記録「流れる星は生きている」に心が動かされた。戦中派で、父を戦争で亡くした者が8月に読むと特別な思いがする。

 

 現菜園の活動は2年目で、気分的にも少し余裕が出てきた。区画の道路に面した周辺や路面は雑草が茂っていたので、冬場のうちに根こそぎ退治し、その後も手を加えた結果、ずいぶん見映えが良くなった。さらに道路側にはアーティチョーク、花オクラ、ローゼルなどを植え、散歩する人にも初夏から晩秋にかけて野菜の花を楽しんでいただけるようにした。

 

 今年のニューフェースは、キャンディーランタンという名の食用ホオズキ。説明書に「マンゴーのような味と香り」とあったので、迷わず苗を1株入手したものだ。包が黄ばんできたら収穫し、その後2週間ほど置くと、追熟してトロピカルな味わいになった。8月頃には虫に食われるので無農薬では限界があるが、来年また挑戦したい。秋ウコンも栽培し、9月下旬に花茎が伸び、初めて花が咲いた。ウコン(鬱金)は濃い黄色を意味するとおり花も黄色で、なかなか気品がある。根茎は干してカレーのスパイスとか、二日酔い防止の薬にもできる。危険な暑さのおかげか、イタリアの料理用トマト、サンマルツァーノ2株は、これまでになく大豊作で、妻が下処理をしながら「もう、うんざり」と悲鳴を上げた。このストレートジュースの味わいは、トマトジュースが苦手の私にも美味しく飲めるほどだった。

 

9月4日の超大型台風21号には、自然の脅威を知らされた。背が高くて花を付けた花オクラ、ローゼル、丹波黒豆が根こそぎ倒されたりした。特に丹波黒豆は花期の終盤だったため実付きが悪く、今年は多めに植えたのに収量は例年の1/4ほど。いつもの皆さんに黒枝豆を味わっていただけなかった。バジルやレモングラスなどの葉物、定植したばかりの秋冬野菜の苗も痛めつけられた。イタリア野菜の定番、プンタレッラやラディッキオは、ある程度まで育っていたので何とか耐えられた。昨年発芽で全滅したフェンネルは、今年はまずまず順調に育ち、久しぶりの収穫が待ち遠しい。

 

 他の趣味では、毎週ホームページに掲載する「道草撮影」が14年目に入った。名前を知らない草木も撮り、後に調べて見つけたときの喜びは大きい。今年もアツミゲシ、オウゴンモチ、クサネムなどの名が加わった。人の名と同じように、名前を知った草木には、友達のように親しみがわく。旅では、海外よりも未知の近場に興味が移ってきた。ここ数年、日本ワインが美味しくなったので山梨県と長野県のワイナリー巡りを夫婦で楽しんでいる。勝沼ぶどう郷は今秋で3度目。甲州ぶどうの美しさ、中小ワイナリーのぶどう栽培、ワイン醸造と普及への熱意にいつも魅了される。もう1つの旅のテーマは、県内の馴染みの少なかった地方都市を日帰りで散策すること。これまでに、西尾、半田、高浜、瀬戸、犬山の各市を歩いた。ウォーキングにより運動不足が解消されるし、毎回、小さな発見も少なくない。近くでも非日常の気分をたっぷり味わえる。

 

 3月に私より若い父系のいとこが急に病死した。昨年11月末、出張中に病死した62歳のいとこの葬儀に同行したばかりだった。彼は夏の甲子園に出場したことがあり、海外赴任も多くコスタリカ、インドネシア、アンゴラの様子をよく聞かせてくれた。7年前の6月、彼の家に咲いた南国の珍しい薄紫色のジャカランダを眺めてのお花見会は、今でも忘れられない思い出だ。父系の男性のいとこは私の上下で7人いるが、この4年間で私と年齢の近い4人を一気に失った。戦後の小学校時代には野外での格好の遊び相手となり、その後も刺激を受け合い、リタイア後は春秋に食事会をして励まし合う仲間だった。歳下の死は、私にとっても死が身近なことを気付かせてくれる。

 

 最近、老眼の度数がまた進んだ。運転免許証の「免許の条件」欄に初めて「眼鏡等」と書き加えられ、遠近両用の眼鏡を新調した。来年は元号が変わり、私は喜寿、わが家では金婚式を迎えることにもなる。昭和、平成に次ぐ3つ目の時代に備え、古びたマイカーを買い換え、Windows 7 だったパソコンを10 に新調したが、数年間も進化した機器をこの歳でいきなり使いこなすのは至難の業だった。9年前から愛用していたビデオカメラも故障したが、何とか同機種の中古品で間に合わせた。新しい時代でも身体ばかりは新調できないので、時代の急激な変化に何とかしがみついていけるよう、夫婦で心身とも日々メンテナンスを心がけたい。

 

   2018.11.1

 

 

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